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新年

 毎年、この時期に考える

 長いようで短い年だったなぁ、去年もいろんなことがあったなぁ


 どんなことを考えようとも、ただ1つ言えることは、新しい年を今年も皆揃って迎えることができてよかったということ



 「・・てめぇは何で着物じゃねぇんだよ」

 「退院して2週間弱、傷口に障ったら大変・・」


 着物を着る許可が担当医から下りなかったのは本当




 でも、名前はウキウキしながら餅を捏ねている

 別に皆に傷口の心配をしてほしくての発言ではない




 ただただ、あの重くて動きにくくて、すべての動作に気を使っていなければ着くずれるという、赤っ恥をかかされかねない衣装が嫌いなのだ

 毎年、嫌々ながらに美咲に着付けられていたのだが、今回は医師の指示という立派な後盾を手に入れた、つまり、正面切って断ることができた



 学園に来て最もよいお正月を今年は迎えたと名前が感じているであろうことは、周囲の目にも明らかだった






 全員の思い思いの餅が出揃った

 見るからに食べてはいけないのではと疑いが湧き上がるようなものもあれば、どれ1つとこっそり失敬したくなるようなものも





 見た目こそは置いておいて、皆で協力し合って作った雑煮はかけた手間の分だけ食べるのが楽しみ

 そう、翼の余計ないたずらが発覚するまでは・・・





 ベッチーン


 「なに!?後ろに誰かくっついた!?」

 そりゃ驚くよね、まんまと1人この一心同体地獄から逃れた名前は、遠い目をして皆を見つめている




 「・・翼先輩、正直これは笑えません・・・」

 「名前−−、もっちもっち粉の効力を消すアリスを・・・」

 「無理です、体内に取り込まれたもっちもっち粉がどんな風に作用しているかもわからないのに、アリスを打ち消すアリスなんて作りようがありません」




 佐倉さんと日向君、この様子は以前おこった引っ付き玉事件に似ているなと当時のことを思い起こし、苦笑する




 「佐倉さん、ドンマイ

  ・・私は、15分ほどで限界が来たけどね」

 「てめぇどういう意味だ」

 ベシっと頭をはたかれる




 そろそろ1時間がたつ

 ちらほらともっちもっち粉の呪いから解放される皆さん

 そんな中で、今井さん、乃木君ペアが一向に離れる様子はない




 更に、佐倉さんと日向君も離れられないんだとか・・

 どう見たって、手を繋いでるだけにしか見えないんですけどね




 ふと、佐倉さんが当たった花姫殿の抽選玉を思い起こす




 日向君・・・

 無茶したって妹さんに会えるとは限らないんだよ・・ 




 それでも、Zのアジトに無理に潜入した私に、彼を引き留める権利なんてありはしない




***
**
*





 あいつが何か隠しているのは分かる

 それを、聞き出す術がない




 俺は葵を助けた後、どうする?

 今までは、葵を見つけルカを連れてここを抜け出すことばかり考えていた

 でも、今はあいつを独りここに置いていくことを、ためらってしまう





 「なぁ、あんた、何でこんなことするん?」

 「うるせぇ、さっさと寝ろ」

 「付き合ったってんねや、何でかくらい、教えてくれたってええやん」

 「・・燃やされたくなかったら寝ろ!」






 苗字はきっと、外については来ない

 あいつを学園に縛り付けてる鎖が切れないかぎり・・





 まだ、母親を探しているのか

 見つけたら、今度こそ殺す気でいるのか





 止めたい、止められないならせめて、近くで見守ってやりたい

 ・・支えになってやりたい

 


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