引っ付き玉
本日、アリス祭3日目
体質系クラスの舞台がある日である
「ルカ君、かわいいぃいい〜!」
乃木君が主演をやると聞いて、「絶対に来るなよ!」という乃木君の意向をかんっぺきに無視して、クラスの皆が舞台裏まで押しかけている
それにしても、白雪姫の格好が非常によく似合う・・・本人は不本意なようで赤い顔してふくれっ面
傍まで近づくと、警戒ムード
さらに、声をかけようとするとプイッとあからさまに目を反らして、立ち去って行った
・・・?
これは、避けられたのか?
「おいっ、チビ!」
・・・私のこと?
振り返ると不機嫌そうに、こちらを睨み付けている日向君
「ルカになんかしたのかよ」
見ていたのか・・
「・・覚えがない」
その時、スカートの裾を小さく引っ張られる感覚を覚え、下を見下ろす
初等部A組の男の子
特力クラスの陽ちゃんと一緒に何度か遊んであげたことのある子
「慶ちゃんは、森の小人の役なんだね、よく似合っているよ」
へへっとはにかむ姿に思わず頬が緩み、しゃがんで頭を撫でてあげる
そのすぐ後ろで、心読み君が佐倉さんに引っ付き玉をこっそりとプレゼントしているなんて、知る由もない
「あぶないっ!!」
その声に咄嗟に天井を見上げる
まっすぐ、緞帳が私と慶ちゃん向かって落ちてくる
***
**
*
まるで、地獄絵図・・
引っ付き玉の爆発により、舞台上は緑のネバネバにもがく人たち
かくいう私も、そのうちの1人
逃げられないと思わず目を伏せたとほぼ同時に首に腕を回され、後ろに引き倒された
おかげで、緞帳の下敷きにはならずに済んだが、後方に放火魔の気配を感じる
日向君の腕と私の後頭部が引っ付いてしまったらしい、目で確認できない私は、何かの冗談であってほしいと祈るが、日向君の反対の手が慶ちゃんとしっかり引っ付いている姿を確認し、・・・絶望・・・
「名前ちゃーん、何とかならないかな〜、なんて☆」
こんな状況で語尾に星マークを付けてくれんな
「自分のことでもあるので、全力で協力はしますが期待しないでください・・
アリスを打ち消すアリスを作るにはよっぽど、引っ付き玉と相性のいい道具を見つけないといけないので」
「ありがとう、でもそれじゃぁ、代役についても考えとかないといけないなぁ」
周りを見渡すが、そう都合よく相性のいい道具を見つけられるわけもなく・・
・・あれならいけるかもしれない、と近くに落ちていたバケツとハケを拾う
日向君を背にくっつけたまま、校舎脇にある水道まで移動する
あ〜、なんて歩きにくいのだろう・・
持ってきたバケツに水を汲み粘着物質を溶かす水のアリス"
人のアリスを打ち消すアリスを作るのでいつもの数倍、気持ちと力を込めてアリスを発動させ、水に言霊をかける
それでも、上手くいくかどうかは五分五分である
できた水をハケに吸わせて慶ちゃんと日向君の手に塗る
うまくいったらしい、2人の手はズルリと離れた
後ろは私には見えないので、日向君にハケを渡す
「・・動くな!」
「・・痛い、引っ張らないで
・・・くすぐったい・・早くしてー・・」
「うっせぇ!文句ばっか言ってんじゃねぇ!」
ゴンっと頭突きを食らう
「・・いだい」
・・はぁ、助けてもらったとはいえあんまりの仕打ちだと思う
ようやく、日向君から解放されて、皆のもとに引っ付き玉を溶かす水を届けた時には、私の心はずたぼろ
それでも、大成功を収めた舞台を御礼代わりに間近で見せてもらい、十分楽しめたのでよしとする
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[mokuji]
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