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どっかの悪意

 


こんな仕事柄、当然友人なんてのは表と裏で別れる。

でも俺は男なのであって、そりゃ気になる訳でありまして。

彼女とか欲しい訳です、年齢的にもね。

で、勇気出して彼女作ってみるけどいつも同じ結果。

向こうに付き合って、って言われて、向こうからフラれる。

いい加減このサイクルにも飽きてきたけど。

やっぱり欲には忠実じゃないと、人間生きてけない訳だ。



そんな事を言ってる俺の彼女は現在、70人目くらい。

もう正確な数は覚えてない。

数えるのも億劫になる程、どれも同じ展開。

大体最初辺りに至っては顔すら思い出せない。

まぁ、思い出すなんてしたくないけど。



「はー…」



言っておくが今は仕事中だ。

裏の仕事中。

と言ってもたった今それは終わって、さて片すか、って所。

これを片付けたら彼女と遊ぶ予定だった。

後ろから物音がするまでは。

ジャリ、と何かが砂を踏んだ音がする。

勢いよく後ろを振り返ってみれば、怯えた目で俺を見る彼女。

こんなのはもう慣れた展開で、銃に弾を込めながらとりあえず話しかける。



「もしかして見た?」

「…景さん、人、を…」

「あぁ、やっぱ見てたか」

「ひ、人殺し…」

「今回は自首を勧めねぇ方か」



こんな時の女の反応は大体2つ。

「自首しましょう」とか言う奴と、「人殺しー」って逃げる奴。

どっちが面倒かって言われたら逃げる方。

わざわざ追っかけなきゃいけないから。

でも一応俺の彼女な訳で、だからそれなりにちゃんと配慮はする訳で。



「で、聞くんだけど、こんな俺でもまだ付き合える?」

「ひ…こ、来ないで!こっちに、来ないで!」

「思い切りフラれたーわー俺悲しいー」

「っ…!」

「あ、逃げた」



まぁ、こうやって結局フラれて。

逃げられても大して慌てたりしない。

慣れた、って言うのもあるけどそこは俺の腕の見せ所。

逃げる女の足を銃で撃ち抜く。

走れなくなった女はそこでこけた。

でも生きたい執念からなのか、匍匐前進で何とか前へ進もうとする。

あとは簡単な話、後ろから頭を撃ってそれでおしまい。



「悪いんだけど、これも仕事でね」



俺について来ちゃったお前さんが悪い。

興味持たなきゃまだ生きれたのにな。

まだ綺麗なおねーさんだし、もったいないけど。



「じゃ、さよならって事で」



頭目掛けて、引き金を引いた。




で、結局掃除するのは俺なので面倒が増えるだけ。

何とか片して帰途についた。

今日は散々だ。

はー…言ったら言ったでAKにまた笑われるな。

「お前ホント女運無いよなー」って。

確かに、付き合うオンナノコってどうしてこうも好奇心旺盛なのかね。

付き合ってきたオンナノコは全員、勝手に俺の後をつけて俺をフって、お陀仏。

仕事見られちゃ消す以外に選択肢無いから仕方ない。

とか考える自分は大分この仕事に染まってんなー。

ぼんやりと考えながら空を見上げると、血みたいに真っ赤な太陽が沈んでくところだった。



「ただいま」

「あれ?お前今日帰ってこねぇんじゃなかったっけ」

「毎度おなじみ、無かった事になりましたよ」

「何だよ、また破局したのかー」

「笑うんなら笑えよもう」

「なんつーかアレだな、呆れ通り越して笑えてくるな」

「全くだ」



家に帰ると、飯を食べようとしていたAKがいた。

ここは俺とAKが住んでるから当然だけど。

俺を見た瞬間、分かってて言ってくるAKをすっごく殴りたい。

けど飯を食ってる奴を殴れば食べ物が勿体ないので諦める。

AKと適当に会話をしながら、自分の為の飯を作る。



「もう何人目?」

「知らね、70くらい」

「適当ー」

「数えるのめんどくせぇ」

「確かに、で、原因は?」

「前回と一緒」

「また見られたのお前」

「仕方ねぇだろ、つけてくる女って大体気配しねぇもん」

「それ油断しすぎてるだけじゃ」

「それは無い」

「えー」

「うっせー」

「しかし、ここまで来ると何かお前ハメようとしてるような悪意を感じる」

「やっぱり?」

「つーか悪意しか見えねぇよ、お兄ちゃんお前が心配」

「嘘付け気持ち悪い」

「酷っ」



とか会話している内に、炒飯が出来た。

皿に盛り付けて、冷蔵庫からお茶の入ったペットボトルと冷やしておいたコップを取り出して、テーブルに持っていく。

自分の空のコップにお茶を注いで、ついでにAKのにもお茶を注ぐ。



「お、さんきゅ」

「ん、で、お前は?」

「は?」

「AKはどうなんだよ」

「俺ねー俺表にでねぇからどうにも」

「あれ?でもお前、大分前だけど彼女いなかったっけ」

「いつの話だよ」

「2年前くらい」

「とっくの昔に死んでますー」

「は?」

「KKの彼女と同じ最後だったな」

「へぇ、その彼女もストーカーだったのか」

「しかも標的と付き合ってた」

「うわっ、それは酷い」

「流石に吃驚したわー『彼を殺さないで!』だってー」



おどけながら、裏声で喋るAK。

口では笑いながら言っているが、目は普通に笑ってなかった。

むしろ仕事中の目に見えた。



「で、それから?」

「あーめんどくさくなったからナイフで目と心臓刺して終わり」

「随分あっさりしてんな」

「だってさー目の前で庇われちゃあ萎えるわ」

「しかし目を刺す必要あったのか?」

「無い」

「じゃあ何で刺した」

「見る目が無かったね、って意味で」

「ひでぇ」



少しふざけながら話をしつつ、食べていればあっと言う間にご馳走様。

皿を流し台に置いて、とりあえず寝る事にした。



「AKは今日仕事だっけ」

「おー」

「じゃ俺寝るわ」

「おやすみー良い夢を」

「ふざけんな、おやすみ」



最後に言われた嫌味に対して、近くにあったはさみを投げつける。

それが刺さったか刺さらずに受け止められたかは気にせず、自室へ向かった。



「あー…疲れた」



ベッドにダイブして、そのまま、寝た。






どっかの悪意
(起きたらいつも通り)
(でも二ヵ月後くらいに)
(また同じ事を繰り返す)
(やっぱこれって何かの悪意?)








――――――――――*
KKさんの彼女事情
AKさんにも一応いたんだけど
面倒になったからって今はいない
KKさんは普通に運が悪いとかじゃなくて
巡り合せ的な意味で女運悪そう
「景」ってのは表の名前的な
苗字は考え中だったりします

ここまで読んで頂き有難う御座いました


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