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イライラ

 


緩めたネクタイに皴だらけのワイシャツ、同じく皴だらけのズボンと緑のスリッパ。

手には英語の教科書とその教科書の間に挟まれた漫画。

耳にはヘッドホンをしている。

大きくあくびをしながらダラダラと廊下を歩くオレンジの頭。

こんななりでも一応教師である。



あー…眠い。

昨日もーちょい早く寝りゃ良かったな…。

いやでもギターに何かあったらどうする。

今日は自習にして寝るか。



とか教師らしくも無い事を考えながら一時間目の授業をする教室へ向かう。

教室の扉の前で立ち止まり、少し開いている扉の上のほうを見た。

すると、ついさっき黒板を綺麗にしました、と言わんばかりの白いチョークが付いた黒板消しが挟まっていた。

これを見てだらしの無い教師−DTOは呆れた。



「…俺様がこんなんにハマると思ってんのか?」



とりあえず教室に入ろうと、扉だけを勢いよく開け、黒板消しが床に落ちるのを見届けた。

落ちた黒板消しを手に、不機嫌そうに教卓へと進む。

そして、黒板消しを黒板の溝に置き、生徒の方へ向き直った。



「誰だーンな下らねぇ事したのはー」



生徒に問いかけるも無反応。

それもその筈。

DTOにこんな事をしたと知られたら課題どっさり、居残りみっちりである。

ちなみに居残りみっちりとはDTOが生徒を一対一で弄りながら英語を教える事から付いた。

しかし、反対に首謀者を教えてしまえば良い事が一つあったりする。

それはシュークリームを1個だけだが貰える事。

有名なケーキ屋で売っている結構高めのシュークリームなのでそれに目がくらんで教えた生徒もちらほら。

しかしそんなDTOでもこの学校ではかなりの人気者だ。

授業をサボったりする生徒は居らず、DTOは居眠りしても居眠りする生徒も居ない。

人気だからこそ、ちょっとした悪戯を仕掛けたくなる生徒もいるのだろう。



「ちなみに今自首したらシュークリーム1個付いてくるぞ」

「はーい」



シュークリーム付きと聞いて、ある生徒が手を上げた。

爽やかな水色の髪に目の見えないサングラス。

服装はどうにも学生服とは思えないスーツを着ている。

ちなみに胸には大きく『サ』の文字。



「何だサイバーお前か」

「いやいや、犯人はリュー」

「ちょ、おま、仲間売るのかよ!」

「だってシュークリーム美味いじゃん」

「ほーリュータぁお前か」

「いや、違、サイバーも共は…」

「サイバーは告発したから見逃す。だがシュークリーム無し」

「マジで?!」

「マジだ。で、リュータお前は放課後覚悟しとけ」

「今日はバイトが」

「休め」

「いや無理っス」

「よし、じゃあ課題は5倍な」

「5倍?!」

「頑張れよー」

「ただでさえ多いのにそれの5倍?!」

「当たり前だろが」

「じゃあせめて提出期限延ばすとか」

「しねぇぞ」

「マジかよぉぉぉぉ!」

「よーし授業始めンぞー」



嘆くリュータを尻目に教科書を開くDTO。

実際は開いた教科書の上に漫画を挟んであった為、漫画を見ているだけだが。

しかし漫画を読んでいるとは思えない程、授業はどんどん進んでいく。



「ただし小文字にすんなよー。小文字にしたら赤点な」

「小文字にしただけでですかー」

「小文字にしただけでですよー」

「えー」

「横暴だろ…」

「何か言ったかリュータ」

「何でも無いでーす」

「とにかくここは大文字にしときゃ点は入るからしっかり覚えとくよーに」



と、キリのいい所でチャイムが一時間目の終了を告げる。



「じゃあ予習復習テキトーにやってテストで赤点出さねぇよーに」

「「はーい」」



色々書き殴った黒板を生徒に任せて、教科書(in漫画)を手に教室を出て行く。

さて、教員室戻ったら茶でも飲むか。

なんて考えていると教室を出て廊下を少し行った角で誰かとぶつかった。


ドンッ


「うわっ」

「うおっ」


ガン


当然油断していた訳だから転ぶ訳である。

そして思い切り床に頭を打ち付けてしまった。

あまりの痛みに打った所を手で押さえつけた。


誰だぶつかってきやがったのは…。


生徒ならシュークリームたかってやる。

とか不謹慎な事を考えながらぶつかってきた相手を見ると。



「あいてて…って、あ!ぶつかってすみませ」



ソイツは俺を見て固まった。

何故なら、俺がパシりに使ってる後輩だったからだ。

思わずキレた。



「ハジメぇぇぇ!てめ、前見やがれ!」

「ぎゃあああ!先輩すみませんごめんなさい!」

「お前はいつになったら廊下を走らず行動出来んだコラ!」

「いやだって時間が」

「じゃあ20分前行動を心掛けろ!」

「授業終わって無いじゃないっスか!」

「じゃあ時間ギリギリまでマッタリしてんじゃねぇ!」



当然だ、とでも言うハジメの頭をスリッパで勢いよく叩く。

スパン!と中々良い音が響く。

叩かれた所を手で押さえ「痛っ、ちょ、スリッパは無いっスよ!」とか言う後輩を無視して教員室へ向かう。

後ろから何か聞こえるが全部無視。

無視無視、ガン無視。

とりあえず茶を飲もうそうしよう。

イライラする。




教員室に戻り、自分の机の上に教科書を乱暴に置く。

するとその音を聞いて俺の机の真後ろにある扉から学長サマが出てきた。



「何だ、荒れてんなぁ」

「うるせーよ」

「俺一応学長なんだけど」

「でもガキだろ。授業受けろ」

「そんなの受けなくても俺様偉いから分かるしー」

「て言うか普段居ない学長サマが何で居る」

「学長だからたまには来ないと、だろ」

「むしろ学長なら毎日居ろよ」

「えー別にいいじゃん、優秀な教師陣が揃ってんだし」

「それは褒めてんのか、自慢してんのか」

「一応褒めてんだけど」



褒めてるらしいがどうもそうと聞こえない。

…何でこんなイライラするんだか。



「とりあえずシュークリーム寄越せ」

「いや持ってねぇし」

「ちっ」

「ホントに荒れてんな」

「何か知らねぇがイライラすんだよ」



らしくない、と思いながら学長サマ、もとい神に背を向け椅子に座る。

そんな俺を見てか、ため息をついて部屋に戻った。

…何に対してのため息だコラ。

そう思いながらも机に向かい、漫画を読む。


シュークリーム食べてぇ…。


まさかと思いつつ読み進めていると数分して神が出てきた。



「ほら、シュークリーム」

「…あ?」

「食べたいんだろ」

「…頭でも打ったか」

「失礼な、俺はいつだってこの世界を溺愛して」

「はいはい、じゃあ仕方ねぇから貰ってやるよ」

「え、何その上から目線。俺様過ぎだろ」

「俺様はいんだよ、俺様だから」

「ちぇー感謝しろよー」

「うっすらな」

「いやもうちょっと厚みを」



軽く受け流したりしながらシュークリームを頬張る。

む、中々美味い。

神なんぞ居ないかのようにパクパク食べる。

しかし感謝云々と神がしつこくて集中出来ない。

よし、奥の手。



「…ちなみに昨日六が」

「あ、俺ちょっと用事思い出した。じゃっ」

「MZD…ホントに六苦手なのな」



とりあえず過ぎ去った嵐をよそに10個ある内の3個目に手をつける。



…美味い。






イライラ
(にしてもあの神は何のつもりで)
(あー!先輩だけズルいっスよ!)
(…うぜぇの来た…)







――――――――――*
DTOメインにしてみた。
口調統一出来てない気がしますアチャー
ホントは神様登場+黒神様も、の筈が
ややこしくなるんで神様だけ
初めてDTOメインで書いたんですけど
これは色々酷い
とりあえず八つ当たり対象になった
ハジメちゃんとリュータごめん
いつかハジメ2Pも出してみたい

ここまで読んで頂き有難う御座いました。


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