PM | ナノ


騒がしい

 


まさか、家に居るなんて。

もう二度と、人間と会う事は無いと思ってたのに。






首に巻いたマフラーを取り、リビングへ向かう。

きっと神様が何かしているだろうから。

リビングへの扉を開けて一言。



「ただいま」

「おー黒、おかえり」

≪おかえりなさーい≫

「邪魔してるぞ」

「よーまた会ったな」



……何か余計な声があった気がする。

扉の影で見えない、神様の座ってる向かい側のソファを見る。

と、そこにはさっき会った奴らが居た。



「…神様、そいつら…」

「ん?コイツらか、えーっと水色頭が六で、オッサンがKKだ」

「ちょっと待った。何オッサンて」

「オッサンだろ」

「いや、まだギリギリお兄さんだから」

「あんま変わりねぇ」

「えー…ね、六からも何か」

「オッサンに賛成」

「六まで?!」

「よし、お前今度からあだ名オッサンな」

「流石にそれはやめてほしいんだけど」



何故か紹介から賑やかになった。

とにもかくにも俺は部屋へ引きこもろうと思い、神様に言う事にした。



「話をぶった切るぞ」

「ん、どうした?黒」

「俺は引きこもる」

「…ん?」

「引きこも…ってそれニートじゃ」

「何か言ったかオッサン」

「え、ちょ、早速とか酷い」

「…ニート?」

「六は少しニュースとか見ようぜ」

「とりあえず俺は引きこもるからな」

「ちょ、ちょっと待て。何でそうなる!」

「人を見るのがいやだから」

「なら慣れろ!」

「無理」

「慣れる前に無理って言うなよ。せめて一回やってみてから」

「無理に決まって」

「決め付けんなー!」



と、こんな調子でちょっとした言い合いが始まった。

六とKKは面白いものでも見るように見物をしていた。

2人は後でイジめてみようと思った。

結局引きこもる事は許されず、俺と神様と六とKKで夕飯を食べる事に。

…こいつらはいつまで居る気なんだ?

眉間に皺を寄せながらも、ご飯はしっかり食べる。

じゃないと腹が減って仕方ないからな。



「黒ー眉間の皺ー」

「…別にいいだろ」

「じゃあせめてお前のオーラを何とか」

「無理」

「改善しろよ」

「やだ」



別に拗ねてるとかそういう訳じゃない。

ただこうやって神様以外の奴と食事するのが気に食わないだけだ。

すると六が箸をとめて神様に聞いた。



「…MZD、結局誰だ?」

「あれ、知らなかったのか」



…教えるタイミングも色々無かったしな。

俺の存在が今日、この家の外に出た事で知られてしまったのが嫌で仕方ない。



「会った事も無けりゃ、居た事も知らねぇ」

「そうそう」

「えーと、コイツは黒って名前で俺の…うーん…」



神様は「俺の」と言い、悩み始めた。

何を悩んでいるのやら。



「んー…双子の弟かなぁ」

「そこはあえて兄だろ」

「いやいや俺が兄だろ」



思わずツッコミを入れてしまった。

…やっぱり俺の方が兄っぽいと思うんだが。

まぁ、俺が兄であろうと弟であろうとどうでもいい事ではある。



「…まぁ別にどうでもいいけどな」



すると、六が俺を見て


「バ神がもう一人…」


と呟いた。

ちょっとムカッとした。

から、こう言っておく。


「神様と一緒にするな。俺はまだ真面目だ」


その呟きを聞いて神様は眉をハの字にさせて少し落ち込んでいた。

まぁ、実際そうだし。



「……黒酷い…」

「でもニートの黒よりは偉いんじゃ」



KKがそんな事を言うから、俺は言い返す。


「オッサンは黙ってろ」


実際オッサンみたいだし。

でもKKは嫌そうな顔をして


「だからオッサンはやめてって」


と必死だった。

そんな風に会話をしているが俺は一つ気になる事がある。

いや、いつまで居るのかも気になるが。

こっちの方が気になる。



「そもそも何でお前らは居るんだ」

「俺はこのバ神の顔を見て遊ぼうかと」

「金欠だからタダ飯食いに」



何とも下らない理由だった。

特に六。お前神様で遊びに来たのか。

2人の目的を知らず家に招き入れたらしく、神様は腕を組み、2人を見た。



「…よし、六もKKも帰れ」

「何だ、わざわざ顔を見に来てやったのに」

「善良な市民が行き倒れてもいいんですかー」



神様の言葉に2人は反論する。

俺的にKKが倒れても別にいい。

だって自業自得だし。



「六、俺で遊ぶな。KK、お前仕事あるだろ」



仕事、と聞いて少し驚いた。

バイトをちょこちょこやって生活してんのかと思ってたから。

じゃなきゃ金欠なんて普通ならないだろ。



「へぇ、オッサン仕事してたのか」

「え、何で俺無職とかいうイメージになってんの?」

「金欠とかタダ飯とか言ってるから」

「俺も一瞬仕事無くしたのかと」

「確かに、こう毎週毎週来られちゃあな」



…KK、毎週来てたのかよ。

そういや、毎週金曜だけ遅めに晩飯食べてたな。

KKが来てたから配慮しててくれたんだろうか。

俺は今、神様をすごく見直した。



「一応仕事はしてっけど最近少ないんだよ」

「とりあえず貧乏なんだなお前」

「…まーね」



言い訳するKKにふと、いい名前を思いついた。

Mr.KKだと何かかっこいいからイラッとするし

かといってオッサンじゃあ言ってる俺が嫌だから

新しいあだ名をつけようと思った。

丁度いい名前思いついたし。



「じゃあいいあだ名をくれてやろう」

「へー…どんな?」



ニヤ、と少し意地悪そうな笑みを浮かべて。



「Mr.貧乏」



一瞬神様と六、KKの動きが止まった。

却下されようがこう呼ぶつもりだ。

動きが止まって数秒後、やっと3人が思い思いの言葉を口にした。



「いやそれは流石に」

「ぶ、ははははははは!KKいいじゃんそれ!」

「…俺も、それでいいと思うぞ…クク…」



KKは嫌そうに言うも、それを遮り神様が爆笑。

そして六も賛成の意を示した。

笑ってるけど。



「よし、Mr.貧乏決定」

「え、マジで?!」

「マジで」

「よし、これから宜しくなビンボー!」

「宜しくな、Mr.貧乏………」

「お前ら、俺を弄り倒してそんなに楽しいか」

「「「楽しいな」」」

「ハモんな…!」



こいつらはまぁ、嫌いじゃない。

そう思えた。

人間は嫌いだけどな。




その後、神様と俺と六でビンボーを弄りつつ。

はたまた、六が神様を弄り倒しつつ。

?も一緒に混じってビンボーを弄り倒しつつ。

時間は過ぎていった。




夜中の12時を知らせる時計の音を聞いて俺はものすごく眠くなった。

一応真面目だから10時にはいつも寝ている。

で、6時に起きて?の朝食作りを手伝ったりしている訳だ。


いつもより長く起きていた為か、体はもう限界のようだ。



未だ遊んでいる3人+?を見て呆れながらも声をかける。



「神様、12時過ぎたぞ」

「…んお、もうそんな時間か」

「MZD、泊めろ」

「あ、俺も」

「帰れ」



泊めてくれ、という2人に神様が一刀両断する。

俺の事を想っているのだろうか。

そうだとすればかなり嬉しいが、流石にこんな時間に帰れと言うのは可哀想だ。

何せ、今は冬。

日の出ている内はまだ寒さは和らぐが、夜になると氷点下を下回る。

六なんか、外に出したら多分どっかで行き倒れてそうだ。

と、勝手に想像しながら神様を宥める。



「…まぁ、そう言わずに泊めてやればどうだ」

「んーそうだな黒がそういうなら……ん?」

「どうかしたか?」

「おま、今何て…」

「泊めてやればどうだ、と言ったんだが」



そういうと神様が感動した、とでも言わんばかりに抱きついてきた。

何か不思議な事でも言ったか、俺。

思い当たる節が無く、考えていると神様が俺の顔を見てこういった。



「…黒…お前…成長したな…!」

「…そうか?」



あぁ、分かった。

神様は、俺が人を泊めればどうか、と言った事に関して驚いたのだ。

まぁ、普通言わねぇしな。



「外に出る事も嫌で仕方なかったのに…」

「そんだけ馴れ合えば嫌でも慣れる」

「またまたー黒、コイツらの事嫌いじゃねぇだろ?」

「ま、嫌いではないな。好きでもねぇが」

「ツンデレだなーいやまぁそれこそ黒らしいんだが」



そんな言葉の行き来を繰り返し、最終的に六とKKを泊める事になった。

とてつもなく長い一日だった気がする。

色んな意味で疲れきっていた俺はシャワーを軽く浴びて寝る事にした。





そんなこんなで、何故かこれから他人との関わりが増えていった。

何でだ…!






騒がしい
(…しまった寝過ごした)

(遅かったな黒)
(よ、朝飯出来てるぞ)
(へぇ、貧乏は料理出来たのか)
(六、お願いだからそれやめて)
(いいじゃんビンボーで)
(いや、仕事さえあれば金持ちなの)

(騒がしい…だがたまには悪くないか)








――――――――――*
何か黒神様の性格が丸くなってきた感じ?
ちなみに上の会話は順番に
黒神様・神様・KK・六・KK・神様・KK・黒神様
ですが分かりにくいですね
六は貧乏と「う」まで発音しますが
神様はちゃんと呼ぶ気が無いので
「ビンボー」と伸ばします
神様と六の区別はここ!
六とKKの区別はもう気合で

ここまで読んで頂き有難う御座いました。


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