紙無一有重
「お前、どうした」
― ニャア
「そうか。じゃあ俺の家来いよ」
― にゃあ
神様が仕事に行ってようやく帰って来たと思ったら
濡れながら腕に小さい猫を抱えていた。
また拾ったのか、と呆れた目で見ていると神様はいつもこう言う。
― 生きてる内に幸せを教えてやりてぇんだ
確か犬は学習能力高かったっけな。
…いや、そんな事はどうでもいい。
まぁ、神様と影が世話をするから俺はそれをただ見てるだけだけど。
にしても、幸せを教えてやりたい、ねぇ。
― 人間にそれを教えてやれよ
なんて、言わない。
意図的に教えて無いだけだから。
言った所で軽く流される。
だから、思うだけ。
ま、教えなくても勝手に見つけて生きてくのが人間なんだろうけど。
数日して猫は死んだ。
神様が言うには拾った時には既に衰弱しきっていたのが原因「らしい」。
でも俺はもちろん神様も泣かない。
影もただ後ろで漂ってるだけ。
この屋敷の裏手にある小さな山の頂上に何個目か忘れた墓を作って猫を埋める。
その様子を見る度神様は呟いていた。
― 幸せを知れたのかどうか、聞きゃよかったな。
猫が言葉を話せる筈が無いのに。
それとも神サマは万物の声が分かるのか。
…ありえそうだ。
今回はあの猫の運が悪かった。
ただそれだけ。
あの日の神様の服が紫色だったから。
運も実力のうち、とはよく言ったもんだ。
運が悪けりゃ、あの神様に見つかって壊されるだけ。
俺たちは止めない。
それが『運命』だからこそ。
生きて死ぬ。
泣いて笑う。
壊して創る。
それは神も人も同じ。
ただ、立場が違うだけで。
持ってしまった能力が違うだけで。
根本は同じ。
まさに紙一重。
無と有
光と闇
死と生
明と暗
朝と夜
神と人
ほら、紙一重。
皆ほんの僅かな違いだけで。
一緒、同じ
同等。
いつかは
天と地
さえも
同じになる
元は一だから
紙無一有重
(ま、俺は)
(運命なんて信じちゃいねぇけどな)
(これは全て必然だから)
――――――――――*
有と無って実は紙一重?
とか考えてました。甘いわ!
紙一重の意味を履き違えてそうです
エレリミカラーの神様は目つき悪くなってそうだ
で、いつもよりニヤニヤ度増してるんだぜきっと
壊すか壊さないか、それは神次第
ただ、神は気まぐれだから気をつけて
ここまで見て頂き有難う御座います。
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