「ええ!? そうなんですか主さん!? ちょっと、俺のさっきの感動返してくださいよ!」
 骨喰の名推理に、鯰尾がぎゃあぎゃあと騒ぎ出した。
「いや、というか私何も言ってないんだけど。……まあ、骨喰の言う通りなんだけどさ、でもだからといって別にあんたたちのことどうでもいいと思ってるわけじゃないし、そこはわかってもらいたい」
「俺たちより資源と札の方が大事なんですね!」
「いや、じゃなくてな」
「主さんの馬鹿! ひどいですよ!」
「馬鹿ってなんだよ。私なりにいろいろ考えてんだけど」
「大体、資源なんて山のように備蓄あるじゃないですか! 札もいっぱいあるし! なんでそんなにケチケチするんですか!」
「だってせっかく貯めたのに無くなるの嫌じゃん」
「使うために貯めてるんじゃないんですか!」
「それはそうだけどさ……でも減るのはなんか嫌なんだよ」
「……主は貯金が趣味のタイプか?」
 骨喰の鋭い一言が、また私に突き刺さった。
 勘がいいというかなんというか……なんだろう、敵う気がしない。
「……否定はできない」
「主さんって本当に貧乏性ですよね」
 呆れた様子で鯰尾が吐いたとどめの一言が、私の中にもかけらほどはあったやる気に火をつけた――というより、今までの散々な言われようにやけになっていた、と言う方が正しいかもしれないけど。


「――わかったよ、そこまで言うんならやってやるよ。第一部隊今すぐ出陣させっから、お前らも準備しろ」
「ええ? 今からですか?」
「自分で焚きつけといて文句言うな。ほら、骨喰も。あんた隊長でしょ」
「いや、俺は駄目だ」
「はあ?」
「きりのいいところまで読み終わってからにしてくれ」
 そう言ってまた視線を手元へ落とす。
 まあ、中途半端なところで中断したくない気持ちはわかるんだけど、わかるけどでも今はすぐに行くべきじゃない? え、そういう空気じゃなかった?
「じゃあ俺も続きやろーっと」
 せっかく立ち上がりかけていた鯰尾も、また骨喰の隣で仲良く寄り添ってスマホの電源を付ける。ちらっと画面を見ると、どうやらさっきから何かのゲームをしていたらしい。
「ちょっとそれ、また新しいの入れたんじゃないの?」
「これすごく面白いんですよー。主さんもやりませんか?」
「あのさ、それ一応支給品だしあんまり余計なことしないでよ? 怒られるの私なんだから」
「大丈夫ですよ。有料のやつは全部自分のお給料でやってますから」
「……え、なに、課金もしてんの?」
「ちょっとだけですけどね。あ、言っときますけど、やってるの俺だけじゃないですよ? この前は御手杵さんがガチャ爆死したって嘆いてましたし。やっぱり俺は刺すことしかできないんだー回すのはダメだ―って」
「……ほんと、あんたたち何やってんの……」
「でもこれ一台しかないし、データも共有だし、そろそろ自分専用のが欲しいんですよねー」
「……欲しかったら自分で買ってください。契約できるのか知らんけど」
「ダメだった時は主さんの名義でお願いしますね」
「えー……」
 脳内に、携帯ショップで新規契約をしている自分の姿が浮かんだ。付喪神って普通に契約できんのかな。
 というか、全員が自分のスマホ持ちだしたら誰も出陣しなくなりそうなんだけど。
 よその本丸ではこういう問題どうしてんだろ。後で聞いてみよっかな。






 そんなこんなで結局、骨喰は読書、鯰尾はゲーム、私は気力をなくしてテレビを見始めてしまい、特別任務へ出陣したのはそれから数時間経った後だった。

 骨喰のきりのいいところって、全部読み終えるまでなのか……。




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