第118χ レンタルビデオショップに行こう@




ワクワクとドキドキが止まらない場所。
この世界にはそんな場所が複数箇所存在し、そう感じる場所は人によって様々だろう。

「いらっしゃいませー。」

少し気怠げな声で出迎えられながら、入口のセキュリティゲートをくぐって中に入れば、その場所特有の少し埃臭さが私の胸をときめかせてくれる。

それがここ、レンタルビデオショップ。
早速、目的の作品があるだろうエリアへ足を運んだ。

私の今回の目的は、前回見損ねてしまったすこやか戦隊スペシャライザー実写版のレンタル。つい最近レンタルが開始されたとの情報を聞きつけやってきたのだ。
見損寝てしまった理由は第第41χを参照してほしい。

入り口前の最新作コーナーで仁王立ちしながら、作品を探す。
最新作コーナーは旧作より多少値は張るが、つい最近まで話題だった映画を鑑賞料の1/3程度の価格でゆったりと自宅で寛ぎながら観ることができるのが非常に魅力的だ。

す...す...、あった!
指で背表紙をなぞりながら作品を探して行けば、そのDVDは隠れるよう右隅の並びに配置されており、幸いにも誰にも借りられてなくてレンタル可能のようだ。
私は迷いもなくパッケージからDVDを抜き取ると、手に持っていた籠の中へ。

これで私の目的は達成したわけだけれど、一枚だけレンタルというのはなんとも味気ない。
店側の策略に乗ってしまうようで少し悔しさを感じるが、せっかくの精神に抗うことは敵わず、私は他に借りるに値する作品を探すべく奥へ進んだ。

奥へ進むと旧作コーナーが見えてくる。
旧作は最新作よりお手頃価格で今まで上映された映画やドラマを気軽に鑑賞できるのだ。あまりお金はないけれど、暇潰ししたい人にとってはもってこいのエリアなのだ。

さて...どんな作品を見ようか。
とりあえず入り口から奥の方へ向かい、タイトルを流し読みしながらウロウロと店内を散策する。

散策中、一度見たことある作品が目に留まると、脳内にその作品の楽しかったところや全体のストーリーが浮かび上がる。多少補正されたとは言え、このように懐古に浸ることができるところが旧作の一番の良さであるように思える。

しばらくウロウロしながらふとレジ付近に目をやれば、そこには見慣れた姿が...あのビビットピンクの髪の人物は一人しかいない。楠雄くんだ。

楠雄くんはレジと旧作の間を何往復もしている。レジに持っていってはキャンセルし、また新たな作品を持ってレジへ。
彼はあんなに優柔不断な性格だっただろうか...どうやら私の知らない一面をまだまだ秘めているような気がする。否、むしろ彼について知らないことの方がきっと多いだろう。

一瞬、彼に声をかけようと開口するも私は咄嗟にそれをやめた。
人によって意見は分かれるだろうけれど、私がもし同じ立場であったなら声はかけられたくないと感じるからだ。それは楠雄くんもきっと同じなはずで、今まで一緒にいた経験からそれはなんとなく察することができる。

私は彼の目に留まらないよう引き続き作品を物色することにした。





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