第116χ Ψ高の玉の輿?!御曹司現る!(後編)@




日はすっかり沈んで東の空より暗闇が迫る頃、僕はとあるところに来ている。

勿論、それは才虎いる屋敷だ。
ここに来た目的は2つあって、1つは平凡さんの救出。

才虎のことだ...僕や海藤をシベ高に転校させようとしてたんだ。平凡さんもただでは済まないだろうということは容易に想像がつく。だから、少しでも早く救出しなければならない。

そしてもう1つの目的…粛正だ。
この件に関して直接的に僕に害があるわけではないが...もし才虎のわがままが通って、万が一にも父がシベリアに飛ばされようものなら、僕は毎日シベ高に通うために日本とシベリアの往復しなければならなくなる。瞬間移動で一瞬ではあるが、毎日はいささか面倒だ。

それに僕は普段は騒がしいところは好まない主義だが...思いの他あの学校、あのクラスが好きなようだ。しかし、クラスメイト達をおもちゃのように扱う暴君の姿は流石に目に余る。
だから、オイタが過ぎた暴君を粛正するために僕はここに来た。

「昨日、ぼっちゃんの命令で拉致ってきた女はどうだ?」
「とりあえず今は部屋で大人しくしているみたいだ。だから少しばかり喝を入れてやったぜ。」
「何やったんだよ?ぼっちゃん見つからないよう程々にしておけよ。」

テレパシーを用いて館内にいる人間の声を拾い、中々様子を窺う。
聞こえてきた会話は才虎の部下達である黒服達のものだ。女というのは恐らく平凡さんのことだろうが...一体何をしたんだ奴らは。

いや、そもそも僕はどうして昨日の時点で彼女がいなくなったことに気付く事が出来なかったのか...これ一生の不覚だ。僕が気付いていたら彼女も拉致されてひどい目に遭うこともなかっただろうに。

ハッと無意識に握りこんでいた拳を開くと、掌には爪で抉ったような傷ができており、そこから血が滲んでいた。

さて...頃合いもいい頃だろう。そろそろ僕も粛正に向かうか。
サイダーマンのヘルメットにここみんズの法被を羽織ると、僕はその身を闇に姿を眩ませた。


「な...なんだお前!?どうやって入った!?」

才虎は僕の姿を見るなり、悲鳴をあげながらその場に尻餅をついた。なんだ、お化けでも見たようないいリアクションだな。
しかし...そんなに驚くことはないだろう。普通に玄関を通って来たんだぞ。

お前も知っての通り、下では丁度ここみんズがお前の照橋さんに対する振る舞いに激怒して、屋敷の周りを取り囲んでいるから僕一人忍び込むなんて造作もなかったが。

それより平凡さんはここにいるんだろう。
返してもらうついでに、面倒な目を遭わされた分やこれから面倒な目に合うかもしれない分も含めてお前を粛正させてもらうぞ。

「ま...待て!落ち着け!と、取引してやる。」

才虎は得体の知れない僕という存在への恐怖に、カタカタと歯を鳴らして尻餅をついたまま、震えた指先で指差したのは、先ほどまで座っていた札束の椅子。

「この金くれてやるから、下の奴らを今すぐ帰らせろ!人子は返してやれないが...その分金をもっと積んでやるぞ!」

実に愚かだ。僕が金なんてもので動くと思ったのか。...だから、金持ちは好きじゃないんだ。
お前は知らないだろう。世の中には金で買えないものもあるという事に。僕はその金では買えないものをお前から奪い返しに来たのだ。

「ぐはぁああ!!」

僕は超能力で先程まで椅子代わりにされていた札束を浮かせれば、一気に才虎の真上へ。そのまま超能力を解いてやれば、その札束は重力に従ってドサドサと音を立てて才虎へ降り注ぎ、その身体を押し潰してゆく。

お前は喧嘩を吹っかける相手を間違えたようだな。
僕を買収したいなら...そうだな、まずは金ではなくコーヒーゼリーの山でも用意しておくといい。

才虎は札束の下敷きになったまま白目をむいて意識を失ってしまった。粛正完了。

さて...早く彼女を探さなきゃな。





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