第115χ Ψ高の玉の輿?!御曹司現る!(中編)@




これが俗に言う修羅場なのか。

照橋さんに告白する才虎くん。
才虎くんに告白されるけど、楠雄くんが好きだと告白する照橋さん。
そして照橋さんに告白された楠雄くん。

先に言わせてもらうけれど、私に告白シーンを覗き見するような趣味は一切ない。
これは不可抗力...いや、もしかしたら回避できたのかもしれないけれど、朝から色々なことがあって頭がいっぱいで、周りどういう状況なのかなんて今の私には事を冷静に判断する力はない。

「ち、違うの!!これは告白を断る為の口実でたまたまその...ね!?だから本当...斉木くんも、平凡さんも...!!」

あわあわと顔を真っ赤にしながら慌てふためく照橋さんはとても女の子らしくて可愛い...なんて、能天気に思っている場合ではない。
いくら口先で誤魔化そうとしても、その乙女の表情が本心だと物語っている。

照橋さんが楠雄くんのこと好きだってことは前々からわかっていたけれど、実際には本人から聞くとダメージが倍以上になって感じられる。
驚きですっかり忘れていたけれど、再び私の心がズキズキと痛み出す。

「...というわけで理由はさっき言った通り。あなたとはお付き合い出来ません。ごめんなさい。」
「...フッ、俺様よりその根暗貧乏を選ぶのか。」

正常な思考の持ち主なら当たり前の話で、いくら生涯に渡り生活に困らない財を手に入れたとしても、心が通わない人の傍にいるなんてまったくもって意味がない。
照橋さんは才虎くんにそう伝えたかったのだろう...彼にそれをすぐに理解しろというのは無理な話なのだろうけれど。

「...まぁいい勝手にしろ。」

才虎くんはどこか軽蔑を含んだ眼差しで私達を一瞥すると、トイレから出て行ってしまった。

思いの外あっさり引くものだから拍子抜けしてしまった...いや、彼がそんな簡単に引き下がるとは思えない。必ず私達に屈辱を与えた報復という形として何かしらしてくるだろう。私にはまったく想像もつかない大胆な手を使って...。

「...ふぅ、何とか引いてくれたわね。」
「うん...だと良いけど。」

ホッと胸を撫で下ろした照橋さんに視線を移すと先程の言葉がフラッシュバックしたのか、リンゴのように顔を真っ赤にしながら私の方へ近付いてきた。

「さ、さっきのは本当深い意味なんてないんだからね!本当、気にしないでよ!!」
「え...あ、わかった。誰にも言わないから安心して?」

私の手を両手で握ってぶんぶんと上下に振る彼女の勢いに押されるように、コクコクと頷けば、彼女の方も安堵したようでコホンと咳払い一つすると何事も無かったかのようにトイレから出て行ってしまった。

そういえばチャイム...鳴ってたんだけ。
そろそろ次の授業の準備をしなくてはと、入り口付近に立っている楠雄くんの横を通り抜けて教室へ向かおうと歩き出した刹那、手を握られてそれは叶わなくなってしまった。

「...どうしたの?」

ゆっくり振り向いて彼と視線を合わせる。
彼の目の奥にはどこか焦りと動揺が入り交じった、私に何か伝えようとでもしているのだろうか。

「授業、行かなきゃ。」

その目に見つめられたら勘違いしてしまいそうになる。
咄嗟に視線を逸らすと、力なく握られた手からするりと自身の手を抜き取り私はトイレを後にした。


放課後、通学路を一人とぼとぼとと歩く。

楠雄くんは何を私に言いたかったのだろうか。
私だって彼にちゃんと伝えなきゃいけなかったのに、聞く勇気も言う勇気も出てこなかった。

上手くいかない自分が腹立たしくて丁度足元にある小石を蹴飛ばしてやった。明日、ちゃんと彼と話そう...いや、話したい。
だって、楠雄くんのこと大好きだから。

「貴女が、平凡人子様ですね?」

振り向けば黒塗りの高級車に黒服の男達。
身の危険を感じ、逃げようとも時すでに遅し。

私の視界はそこでブラックアウトした。





*まえ つぎ#
もどる
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -