第110χ 俺達の夏休みはこれからだ! VA




「...おい、何の騒ぎだ?」
「部長が例の二人と試合するらしいぜ!」
「それに部長がのペアは臨時マネージャーなんだってよ!」

...どうしてこうなった。
私は今コートに立ってラケットを握っている。私を巻き込んで来た燃堂くんも燃堂くんだけど、それを許可した灰呂くんとコーチに異議を申し立てたい。

「おっしゃこーい!!」
「平凡さん、よろしく頼むよ。絶対に勝とう!」
「...うん、善処はするよ。」

審判のホイッスルが鳴り響いて試合は開始された。
サーブはこちらから。灰呂くんの渾身の一球が燃堂くん達のコートに飛んでゆく。
初心者ならばこの豪速球は見逃してしまうけれど、相手はあの燃堂くんだ。ぬるりとボールに追いつけば、これまた渾身の一球が戻ってくる。そのボールは勢いを増して灰呂くんの方へ。

試合展開は燃堂くんと灰呂くん二人のラリーになってしまい私の出番はやって来そうにない。一応はすぐに対応できるように構えて準備はしているけれど。

あまりにやることがなく、それにさっきから楠雄くんと目が合ってとても気まずいというか...楠雄くんを見ているとオカルト部の合宿でのできごとがフラッシュバックされて脳がパニック起こしそうになる。

結局、まだ私達の仲は解決していない。少なからず私はそう思っている。必ず近い内にはまた楠雄くんと何気ない会話で笑いあえたらいいと願っている。きっかけさえできれば...。

ハッと考え事から意識を現実に引き戻すも、まだラリーは続いている様子。炎天下で立っているのも中々に体力を消費してしまう。そろそろどっちか決めて欲しいのだけれども。

「はっはっは!!素晴らしいよ燃堂くん!...だがなかなか勝負がつかない...このラリーを返せなかった方の負けにしないか!?」
「オオ!上等だぜ!」

そろそろ決着がつくらしい。私も足を引っ張ることだけは避けなければ...構え直して集中して目でボールを追って行く。

運命のボールは灰呂くんから放たれて、一直線で燃堂くん側のコートへ飛んで行く。
その弾道は中々際どいコースで、これには流石に燃堂くんもついていくことは難しいだろう。勝負は決したか。

そう確信したのもつかの間、跳ねたボールは何らかの力によって引き寄せられたかのような軌道を描いて楠雄くんの元へ。...あれはまさか、某テニス部部長が見せたゾーン!?

楠雄くんの渾身の一打が私達のコートへ飛んで行き、地面にバウンドする瞬間に猛烈なスピンがかかるとそのままコートの金網を超えて外に出てしまった。

「うおお!!超飛んだー!!」
「あんな球アウトじゃなかったら誰も返せねーよ!」

あんなラインぎりぎりの豪速球、誰も返せやしないだろう。まさか、楠雄くんにあんな技術とパワーがあったなんて知らなかった。

「...完敗だよ。燃堂くん、斉木くん。おめでとう。」
「オメーもいい球だったぜ。」

灰呂くんと燃堂くんはこの試合で更なる友情が芽生えたようで固い握手を交わして、お互いを認め合ったようだ。
私もそれにならうように楠雄くんに手を差し出せば、軽く握り返してくれた。

その後1週間、私達はみっちり扱かれた。
この合宿は私の学生生活の中で一番濃密な時間だったように思う。

To be continued...





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