第109χ 俺達の夏休みはこれからだ! U@




8月1日 - 8月2日
オカルト部合宿

今日から私の怒涛の夏休みが始まる。
正直、この予定だけは何か理由をつけてドタキャンしようと思えば出来たと思う。私も前日までそうしようか真面目に考えていた。知予ちゃんからの電話が来るまでは。

「もしもし、人子?明日の合宿楽しみだね!海藤くんも来るみたいだし、恋の予感って感じビシビシ感じちゃうよぉ!」
「もしもし、そうだね。明日は私...知予ちゃんのこと応援してるからね。」

私はずっと知予ちゃんの側にいて、実らない恋を何度も見てきたから今度は本当に成功してほしいと思っている。
だから、知予ちゃんの恋の手伝いになるような約束はどんなことが起きようとも絶対に破るわけにはいかないのだ。

集合場所は鳥束くんの住むお寺の前。
外は夏らしくカラッとした青空が広がってきて、遠くからは蝉の鳴き声が聞こえてくる。

「遅いっスよ斉木さん、人子ちゃん!」
「人子、久しぶりー!」

寺の前に着くと鳥束くん、海藤くん、知予ちゃん、そして万城乃さんが迎えてくれた。

鳥束くんの言葉にふと自身の時計に目をやれば、確かに10分程待ち合わせの時間から遅れてしまっている...私としたことが。

楠雄くんとここまで来たのだけれど、まさか彼が時間にルーズだったなんて思いもしなかった。いや、きっとこの合宿に対する彼の情熱が彼の足を遠ざけさせたのだろう。

「さあ入って下さいっス。」
「...おお...すげぇ...」

鳥束くんの案内で寺の中へみんなでお邪魔する。
入ってすぐ目に留まったのは私達の何十倍もの大きさがあろうかと思われる仏様。その神々しさに思わず感嘆の声が漏れ出した。

普段こんなに仏像を間近に見られる機会はそうそう無い。細部まで精巧に作り込まれた仏像にこっそり手を合わせる。ここにいるとなんだか心が洗われるような気がする。

鳥束くんのことは正直信用ならないところがあるけれど、この時ばかりは改めてお寺の息子なのだと実感させられた。普段はお寺とは縁遠いような性格しているのに。

「お寺に泊まるのなんて私初めて!ワクワク!」
「ああ!オカルト部の合宿にはぴったりだな。」

キャッキャと知予ちゃんと海藤くんが楽しげに会話しているのを横目でチラ見し、ホッと一安心。このまま二人が結ぶようになってほしいと願わずにはいられない。

「ここがオレの部屋ッス。」
「失礼しまーす...。」

オカルト部の活動時間は真夜中。時間になるまでは一旦鳥束くんの部屋で待機するということで通されたのだけれど...そこにはお寺には似付かわしくはないモダンな部屋が広がっていた。

知予ちゃん達もこれは予想外だったようで固まってしまっている。私も一言二言物申したい気分になったけれど、人の部屋に文句つけるのは如何なものかと思い咄嗟に口を閉ざした。

そして、みんなでトランプや雑談をしながらその時が来るのを待った。


ーーーーーーー・・・・

そして午前零時
いよいよオカルト部の時間がやって来た。
私達は部屋から外に移動して、まだ聞かされていない活動内容が発表されるのを待った。

「いよいよ活動開始っスよ!活動はシンプルっスけど、よく俺の話を聞いてほしいっス。」

今回のオカルト部の活動を要約するとこうなる。
一本道をくじ引きで決まったペアで歩いてもらう、以上。...至ってシンプルで聞き間違えようない説明だと思う。

しかし、そのシンプルさにはいくつか不可解な点がある。
まず一つ目は、ここはいわゆる神隠しが絶えない森で、下手すると霊によってあの世に引き込まれるという噂話があるようだ。そんなところになぜわざわざ入り込もうとするのか。
そしてもう一点、その森になぜペアで行くのか...行った先に何かあるのだろうか。

私の推測からすると、前者はオカルト部らしく霊に絡むからということで、後者は鳥束くんの完全な私情だろう...今回はそういう意味では知予ちゃんも含まれるのだろうか。

そんな思惑が混じり合う合宿。私としては何事もなく終われればそれでいい。





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