第71χ 盛り上がれ、PK文化ψ!(前編)A




「全然怖くねェよ!!」
「次はここ入ろうぜ。お化け屋敷制覇といくかぁ!」

お化け屋敷に入ろうとしたところで聞こえて来た声は、どうやら他校の生徒のようだ。高校のお化け屋敷なんて高が知れているのに、わざわざ大声で馬鹿にする必要はないのではないだろうか。この日のために懸命に準備して来た生徒達の努力を笑う権利はこの人達にはないはずだ。

「僕、怖いモノけっこう好きなんだよね...多分あっちの方が"怖い"と思うからさ...」

そう告げると他校の生徒が入っていったお化け屋敷に窪谷須くんが入っていってしまった。中では悲鳴と共にバキやらグキッなどと、不穏な音が聞こえてきた。お化けは思いの外、私達の近くにいたようだ。窪や...お化けのおかげでスッキリとした。ありがとう!

私達はそんな館を横目に、いよいよお化け屋敷に入って行く。中は暗幕でうまいこと区切られて迷路のようになっている。小道具もしっかり作られていて本格的な感じがする。暗幕で入り口を隠してしまえば、中は真っ暗で何も見ることはできない。

「...思ったよりクオリティが高いじゃねぇか...」
「真っ暗で何も見えねぇなー」

海藤くんもこの暗さに怖が...戸惑いを見せているようだ。燃堂くんは逆に何とも感じていないらしい。勿論、楠雄くんも怖いとかはないみたいだ。
私はというと...幽霊とか超常現象は信じていないのだけれど、雰囲気に飲まれると言うか...とにかく私は、夜やそれに準じる暗い場所は正直のところ苦手だ。咄嗟に楠雄くんの腕を掴むも、嫌がる様子はなく私を引っ張っていってくれる。

「はぉう!!?、ひんぬ!?...みやぁ!?」

ゆっくりと進んでいくも、数歩進む度に見栄を張って先頭を歩いている海藤くんの悲鳴が聞こえてくるものだから、私の心臓もその度にキュンとしてしまう。彼がうまいことカナリアになってくれるかと思ったが、こちらに害があってはその役目にもならない。挙げ句の果てに冷静を装いながら入り口から出ようとしている。

もうヘロヘロの海藤くんの代わりに今度は燃堂くんが先陣を切って前を進んでいく。するとうわっ!!!と私達を脅かそうと出てきた幽霊役の人は、燃堂くんの顎を見るなり泡を吹いて倒れてしまった。これは予想外だ。

「お?オレっちを見て気絶したって?」
「どう見てもそうだろ!こんな暗い場所でお前の顔がドアップで現れたら俺だって気絶するよ!」

海藤くんは燃堂くんじゃなくても気絶そうだけれどね。
しかし困った。脅かし役の人が倒れてしまったとなると、このお化け屋敷は台無しになってしまう。なんとかしなければと暗幕の裏をめくれば、色々脅かすバリエーションを用意していたのか、小道具が詰まった段ボール箱があった。
とりあえず暗幕の裏に幽霊役の人を移動させて、海藤くん達は慌てて仮装をし始めた。代わりに幽霊役を買って出るようだ。私達も彼らに促されるままに仮装してゆく。
なんとか次の客が来る前に準備ができた。それでは、いざ!

「ウオオオオー!」
「おっ、母ちゃん。」

すると目の前には燃堂くんのお母さんの顔があった。それを見た海藤くんは呆気なくその場で失神してしまった。やれやれとみんなでため息を吐き出すと、彼を連れてお化け屋敷を後にした。

外に出てみると燃堂くんのお母さんだけではなく、斉木夫妻も一緒だった。たまたまばったり遭遇して仲良くなったみたいだ。縁というのは本当に不思議なものだと思う。

「うちのクラスはお化け屋敷じゃなくて校庭の石を展示してんだぜ。」
「なんだそれ?ふざけてるのかい?」

ワイワイ騒いでいる間に、私はこっそり抜け出してトイレに向かった。仮装した時の血糊が顔についているのが気持ち悪いし、ここのままでいると周りの人を驚かせてしまうと思ったからだ。

トイレで顔を洗って戻れば、そこにはもう誰の姿もなかった。どうやら私は逸れてしまったようだ。とりあえず私は自身のクラスに向かうことにした。

To be continued...





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