第71χ 盛り上がれ、PK文化ψ!(前編)@




今日は文化祭当日。
朝一から学校内は生徒と学外から来た人達で活気付いていた。

私のクラスの展示の設営も無事、観覧客が来る前に終えることができた。辺りを見回せば拾ってきたとは思えない石が多く並べられていて、思いの外楽しめそうな展示となっていた。

海藤くんのは水晶のような黒く鈍く輝く石。中二病をそそる造形に思わず私もじっと見てしまったくらいだ。
燃堂くんは...それは地蔵の首ではないだろうか。後々祟られないように彼には近付きたくないものだが。
楠雄くんはありふれた丸い石で、3箇所に窪んだ穴があって人の顔に見えなくもない。
知予ちゃんは女の子らしいハートの形をした石。確かに可愛いけれど、真ん中に綺麗に入った亀裂が不穏な空気を醸し出している。
照橋さんのは薔薇のような造形の石だ。自然にこんな形になるだろうかと疑ってしまうほど薔薇によく似ていた。
窪谷須くんの拾って来た石は赤黒い模様が特徴的だ。拾って来た場所が校舎裏の人目のつかない場所だったということから、どうしても事件性を疑わずにはいられない。
灰呂くんのはまさにテニスラケットの石だ。こんな石がどうやって自然にできるのか知りたいくらいなのだが。もしかしたら遠い昔に石の彫刻家がこの学校にいて、その人の作品なのかもしれない。あくまで想像の域を超えないのだが。

ちなみに私の展示物はありきたりな丸い石だ。一つ違うのはその石はまん丸でツヤツヤとした輝きを放っていること。撫でると指感触が心地よくて癖になる。展示が終わったらもって帰ろうと思う。

「よーし、じゃあみんなで円陣を組もう!」
「文化祭を成功させるぞォオー!!」

はたして今の円陣には意味あるものだったのだろうか。その後すぐ解散してしまって、各々散ってしまった。団結も何もないような気がする。
楠雄くん達もどこかに回るようだ。燃堂くんが珍しく照橋さんを誘っていたけれど、用があると呆気なく断られていた。

私は自身から人混みに入って行く気は毛頭ないので、教室の隅に置かれていた展示の見張りをする椅子に腰掛けて小説を開く。展示品の安全は私に任せて、みんなは文化祭を満喫してくるといい。

「平凡、何やってんだ。さっさと来いよ。」
「早くしねぇと色んなとこ回れないだろ?」

せっかくゆっくりしようと思っていたのに燃堂くんと海藤くんに呼ばれてしまった。私も一応数に含まれているらしい。普段から共に行動をしていたのが裏目に出たようだ。渋々立ち上がると彼らの後ろについて行く。

燃堂くん達に連れられてやって来たのは、野外の特設ステージで行われるミスコンだった。もう会場は人で溢れていて、私達は仕方なく最後尾で観ることになった。

「ハッハ!んなの照橋さんの優勝に決まってんべ!!お前もそう思うよなァ?」
「え?...あ、ああ。そうだな...」

まったく燃堂くんのいう通り、これは出来レース以外のなにものでもない。それにもかかわらず何人もの女子が応募しているようで割と好評のようだ。
照橋さんを意識しているだけあって、出場者のレベルは中々に高いと個人的に思う。観に来た男子生徒のテンションも急上昇中だ。...というより、いつの間に窪谷須くんがいたのだろう。全く気付かなかったよ。

『いかがでしょうか、今回の出場者は?!解説の校長先生。』
『容姿に関わらず皆さん可愛らしい生徒であるからして...非常に欲情します。』

お巡りさんコイツです。
校長先生ともあろう人が爆弾発言を炸裂している。教育者の頂点に君臨するものとして大丈夫なのだろうか。もしかしたら私は通う高校を間違えたのかもしれない。
解説にもう一人呼ばれているようで、マイクを向けられて話し始めたのはなんと照橋さん。彼女のたすきには第2回ミスPKと書かれている。

「皆さんとても綺麗で、甲乙つけがたいです。」

彼女が解説としているとしたらこのミスPKとはなんなのか...ステージの幕に書かれている字をよくよく読んでみると、小さい字で準と書かれている。なるほど、見事な茶番だった。

ミスコンもそこそこに校舎内に戻ってくると、私達は引き続き他のクラスの出し物を物色し始めた。
お化け屋敷やカフェ、ストラックアウトにお化け屋敷やカフェ、お化け屋敷...お化け屋敷と本当に色々な出し物があってどれも盛り上がっている。どこのお化け屋敷とカフェに入ろうか本当に迷ってしまう。

中にはお化け屋敷とカフェのいいとこ取りをしたお化け屋敷カフェなんてものもある。そのカフェの謳い文句が「襲いかかるコーヒー!!貴方は耐えられるか」。私は多分耐えられないだろう。コーヒーに襲い掛かられて、コーヒーでも被った日には熱さで火傷できる自信くらいはある。

ふと楠雄くんが立ち止まった。私も立ち止まって楠雄くんの視線を追ってみればカフェがあった。何も変哲もないカフェに見えるけれど、楠雄くんの目を引くものが何かあるのだろうかと探してみれば、入り口には張り紙が貼られていて、コーヒーゼリー有りと書かれている。

「...楠雄くん、コーヒーゼリー食べたいの?」

何気無く聞いて見たら素直に頷いている。こういうところで出る食べ物は、大抵市販品の盛り付け直しだからそんなに期待するようなものではないと思うのだけれど、楠雄くんが行きたいと言うなら私も是非ここでお茶したいところだ。

しかし、その願いは叶わずに普通のお化け屋敷に入ることになった。ここでの主導権は海藤くんと燃堂くんにあるらしい。残念だったね、楠雄くん。





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