第68χ ψ建なるか?純喫茶魔美を救え@




美味しいコーヒーに、これまた美味しいコーヒーゼリー。そして目の前には恋する彼がいる。
一度に幸せをもらってしまったみたいで今日は雪でも降るんじゃないかと窓から外を眺めるも、空は雲一つない晴天でホッと胸を撫で下ろす。

私は今、楠雄くん一緒に純喫茶魔美でアフタヌーンティーを満喫中。
散歩ついでに魔美に寄ったら、偶然にもお店の入り口で楠雄くんとばったり出くわした。そして彼は先日の約束を覚えていてくれたようでコーヒーゼリーをご馳走になっているというわけだ。
半分冗談のつもりで言ったのだけれど、彼がそのことについて覚えていてくれたのはとても嬉しかったし、ここはお言葉に甘えることにした。

以前も話したがここのコーヒーゼリーは絶品で、どのくらい絶品かと言うと...普段表情をあまり変えない楠雄くんが幸せそうな顔するくらい美味しい。ハッと私の視線に気付いて戻してしまったけれど。

「斉木くんに平凡さん、来てたんだ。」
「目良さんこんにちは。今日も精が出るね。」

目良さんに沖縄旅行でのお土産を手渡すと泣いて喜んでくれた。彼女は生活費を稼ぐために今回の旅行に来ることはできなかった。けれど、雰囲気だけは感じて欲しくて沖縄名物を色々買っていったのだ。

「お土産に、いつもお店にコレ落としてくれてありがとうね!ゲヘヘヘヘ...」
「どういたしまして...それにしても妙に静かだね。今日は休日なのに。」

普段はもう少し人の出入りがあったりするのに、まったくと言っていいほど聞こえてこない。その違和感にキョロキョロと辺りを見回してみると、どうやら私達以外の客はいないようだ。嬉しそうに笑っていた目良さんの表情も次第に強張っていく。

大体の理由はわかっている。魔美の向かいに新しく大手コーヒーチェーン店が原因だ。恐らくそこに客をすべて持っていかれたのだろう。

「あのお店が出来てからお客さんが減っちゃって...今までも結構ギリギリだったからこのままだとお店潰れるかもって、店長すっかり落ち込んじゃって...」

目良さんの視線の先には店長がいて、何だか近寄り難い雰囲気を醸し出している。怒ったり落ち込んだり、おちゃらけてみたり...かなりの情緒不安だ。これはお店どころではなく、精神科に一度に訪ねてみるべきではないだろうか。
私達の視線に気付いたのか、店長がこちらにやって来る。

「コラ、友達だからって無駄話しない。仕事中なんだよ。」
「すみません、店長。私が目良さんを引き止めてしまったんです。」

ぺこりと小さく頭を下げれば、店長は穏やかに笑いかけてくれた。こんないい店長がいて、こんな美味しいものが食べられる場所が潰れていいはずがない。何か手立てはないものだろうか。
私が考えたところで、店の方針に口出す結果になってしまうからどうすることもできないのだけれど。

さて、アフタヌーンティーも満喫できたしお会計と楠雄くんと入り口に向かうも誰も来る様子はない。

「そうだ、作戦会議しませんか!?ちょうど斉木くんと平凡さんもいますし、お客さんの意見も聞けますよ!」
「...作戦...会議か...」

どうやらこのまま帰らせてはもらえないらしい。楠雄くんと顔を見合わせれば仕方ないと、席に戻って座りなおす。

こうして魔美の命運をかけた作戦会議が開かれた。




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