第65χ 破天荒参上!窪谷須亜蓮@




夏休みもあっという間に過ぎて、高校二年生の二度目の二学期が始まった。この事に違和感がある人もいるだろうけれど、気にしてはいけない。二が揃ってめでたいなくらいに思ってくれていたら嬉しい。

二学期早々のトップニュースは、うちのクラスに転校生がやって来るということだった。そのおかげで、やって来る転校生に対する話題で持ちきりとなっていた。

「転校生は男?女?」
「それが男だってよ。」

どうやら噂の転校生は男子らしい。この言葉を聞いた途端に、男子のテンションはだだ下がりし、逆に女子のテンションは急上昇中。思春期の学生なんてこんなものだ。なんとわかりやすいのだろうか。

しかし、実のところ私も少し楽しみにしていたりする。相手が男子だからという理由ではなく、転校生が来るとなんとなくだが、クラスの雰囲気が変わる気がするからだ。心のどこかでこの環境にマンネリを感じていたのかもしれない。

先生に紹介されて、転校生が入ってきた。
噂の転校生の見た目だけでいうと極々普通の少年だった。黒髪に太めの黒縁眼鏡をかけていて、制服も乱すことなくちゃんと着用している。むしろ、うちの学校にはこういう本当に普通の生徒の方が少ないかもしれない。
表情は俯き気味なのであまり読み取れないけれど、普通に格好いい部類に入るだろう。ヒソヒソと地味だとか根暗そうなどなど...様々な声が聞こえて来るが、私としては悪くないと思っている。

「茨城県から来ました、窪谷須亜蓮です...」

ぽそっと呟くように発せられた声がなんとも控えめでいい感じだ。
名前は亜蓮...中々に個性的な名前に、黒板に書かれた名前をぼんやりと見ていれば末尾に参上と書かれている。それに気付いたのか、転校生は慌てたように黒板を消している。

「あっいや、これはクセで...いや...違う...何でもありません!!」

名前の後に参上とクセで書くなんて、今までどんな生活をしていたのだろうか。ヤンキーでもあるまいし。けど、それがウケたのかクラス内の掴みは順調だ。
もしかしたら私も彼とならうまくやれそうな気がしてきた。窪谷須くんか...仲良くなれたらいいな。

...と、一瞬でも思った私を叩きたい。なぜならば、彼は普通ではなかったからだ!
そもそもこの学校に普通の人がいると思う方が間違いだった。なんという不覚だろう。私らしくもない!





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