第62χ 常夏の楽園-Sunshine Crazy- VI @
二泊三日のハードスケジュールの中、やっとすべての日程をこなし終えて、私達は帰りの機内にいる。
外はすっかり暗くなっていて、窓から外を眺めてもぼんやり雲がかかっている様子しか見ることができない。
ふと周りを見渡せばみんなはしゃぎ疲れたのか、心地好さそうに寝息を立てている。私の隣にいる彼も例外ではない。
帰りの機内はグループの中なら誰と座っても良いという先生の計らいで、私は見事楠雄くんの隣を勝ち取ることができた。そんなに争奪戦というわけではなかったけれど。
ちなみに私の前の席には知予ちゃんと海藤くんが隣同士で座っている。こちらからはあまり様子が窺えないのが残念だ。
更に楠雄くんの隣には燃堂くんがいて、照橋さんは例外的に許可されているため、男子に囲まれるような形で座っている。周りの男子は眠たそうな表情を浮かべながらも、照橋さんの寝顔を無言でじっと眺めている。...側から見たらかなり怪しい。それに眠いなら寝ればいいのに。
さて...到着まで何をしていようかな。静かになった機内で無闇に音を立てるのは憚れるし、生憎時間を潰す本も持って来てはないため、私はただただぼんやりと窓から何も見えない外を見眺めている。
ふと肩に重みがかかるのを感じてゆっくりそちらに首を向けると、楠雄くん頭が私の肩に乗っかっている。正直かなり重いし、髪の毛が何気に頬をツンツンと突くものだから痒くて仕方ない。けれど、せっかく気持ちよく寝ている彼の邪魔はしたくない。とりあえず頑張れるだけこのままそっとしておこう。
彼の寝顔を見ていたら段々私にも眠気が眠やってきた。...到着までまだ時間がある。私も少し眠ろうかな。
ーーーーーーーーー・・・・
ガタンと揺れる機内にハッと目を覚ませば、いつの間にか楠雄くん達は起きていて、時間を見ればそろそろ着陸の時間になっていた。
「旅行も終わりだね...疲れたけど楽しかった。」
ボソッと呟けば、楠雄くんもコクリと頷いてくれた。色々あったけれど、これ程に濃密な時間はこの先早々巡り会えないだろう。ほんと修学旅行に来てよかった。
二泊三日の旅に思いを巡らせていれば、旅客機はあっという間に空港に到着してしまった。
旅客機を降りて荷物が出てくるのをロビーで待っていれば、先に荷物を回収した知予ちゃんがニヤニヤとしながら近づいてくる様子に、私は引き気味の笑みを返す。
「今日はお疲れ!そうそう、携帯に送っておいたから後で見てね。それじゃ、仁子おやすみ。」
「うん?わかった。知予ちゃんもお疲れさま。また学校でね。」
知予ちゃんが去ってから自身の携帯を開いてみれば、そこには一通のメールが届いていた。
文章はないようだけれど、添付ファイルが付いている。それを開くと...そこには楠雄くんと私が頭を寄せて眠る一枚の写真が。
いつの間に撮ったのだろうか...段々顔が熱くなっていくのがわかる。今度、知予ちゃんに美味しいデザートをでもご馳走しようかな。
*まえ
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