第61χ 常夏の楽園-Sunshine Crazy- V A




仕切り直して、みんなを探しながらフラフラと散策を続ける。
さてはて...みんなはどこに行ったのだろう。みんな個性が強過ぎてどこにいるかさっぱり検討もつかない。これだからグループ行動は苦手だ。...一人はぐれた私が言うのもなんだけれど。

「ハァ...ハァ...心美はどこだァ...」

不意に私の目の前に現れたのは変態...ならぬ、今をときめく俳優の六神通こと照橋信。映画館で会った数日後に、照橋さんから彼は恋人ではなく兄だと聞かされて驚いたのをよく覚えている。極度のシスコンのようで、珍しく照橋さんに困っているなんて相談もされたんだっけ。
血眼になって照橋さんを探す様子に、もはや俳優の影はない。

「お兄ちゃんが撮影を抜け出して会いに来たよ...」

まるで徘徊するゾンビのようにブツブツと呟きながら歩く姿は、下手したら警察沙汰になるのではなかろうか。流石に照橋さんもお兄さんが連行されたと聞かされたのでは可哀想だ。...ここは私がなんとかしてあげよう。

「きゃー、あのカリスマ俳優の六神通がいるー。」

棒読みながらも大きめの声で周りに呼びかければ、振り向いた人々が一気に押し寄せて、あっという間に照橋兄はファンに囲まれてしまった。
こんな時でも俳優であることを忘れずに笑顔を振りまく様子は流石と言ったところ。おかげで、道もかなり空いて通りやすくなった。ありがとう、照橋兄!

あてもなくまたフラフラと歩くこと15分。
そろそろ足に疲労が溜まってきた。どこか休めるところはないだろうかと、キョロキョロとあたりを見回せば、地味ながらも純喫茶魔美を思わせるような、どこか懐かしい雰囲気のお店が目に留まった。その名も"スイーツ幻"

雰囲気もいいし、入ってみようかと扉に手をかけてゆっくり扉を開ければ、そこにはみんなの姿があった。

「仁子、どこ行ってたの?」
「やっと班全員集合だねー」

一人でフラフラとするのも楽しいけれど、こうやってみんなの顔を見た途端安心したのはなぜだろうか。空いている席に腰掛ければ、丁度注文していだものが来たようだ。

「平凡も食うか?コーヒーあんみつぜんざい」
「一日5食しかでないらしーぜー。」

目の前に並べられたのはかき氷にコーヒーシロップ、あんこ、コーヒーゼリーが乗せられた味の未知数のデザートだった。
少し食べて見たい気はするけど、せっかくみんな一人一人にあるのだから私がもらうわけにはいかない。断ろうと口を開こうとする前に、既にみんなから分けられたあんみつが乗った皿が差し出されていた。

「さ、食おうぜー」
「修学旅行最後の思い出だ!」

みんなの笑顔で食べる様子に今更断るなんてしたら失礼だろう。ここは素直に受け取っておこう。
いただきます!

デザートを食べ終え、みんなでバス集合地点まで歩いていれば、ふと肩を叩かれて振り返ると楠雄くんがグッジョブと親指立てながら私にパイナップル飴をくれた。...何を言いたいのかよくはわからなかったけれど、楠雄くんも嬉しそうだし...いいか。





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