第57χ 常夏の楽園-Sunshine Crazy- I A




辺りを見回すとずらりとお土産屋さんと食堂が続いている。知予ちゃんと照橋さんとでどこを回ろうかと話し合っていれば、ふいに目に留まったのはハブvsマングースとデカデカと書かれた怪しげな店。

ハブとマングースとは人のエゴによって生み出された産物だ。昔、ハブの猛毒に悩まされていた人々が海外から蛇を食べるマングースを連れて来て、狩りをさせようと放したのが始まりで、その結果は失敗に終わってマングースによる二次被害も出ているとバスガイドさんが言っていた。

「うっわーハブ対マングースだってー。なんか聞いたことあるかもー。」
「なんだか怪しいわね〜。なんか怖いし行こ。」

女子達は気味の悪い雰囲気がお気に召さなかったようでさっさとお土産屋さんに行ってしまった。私はどうしようか。お土産屋さんも気になるのだけれど、こういうところでしか見られないものも見てみたい気もする。

「フッ...土産などは今買う必要はない...。山原最強の生物をみたいとは思わないか...?」
「おー!なんだこりゃ面白そーじゃねーか。」

海藤くんと燃堂くんは行く気満々のようだ。楠雄くんは...興味無さげにお土産屋さんの並びをぼんやりと見ている。しかし、向こうには美少女照橋さんがいる。普段通り地元の人や観光に来た人達であっという間に人集りが出来ていた。
楠雄くんはそれを見るなり海藤くん達の後に続く。人集りより怪しい店、どっちもどっちな気がするけれど...私も楠雄くん達を追って中に入って行った。

中に入ると雰囲気を出すためか、洞窟のように岩が積み上げられたような壁紙が部屋一面に貼られている。そしてガラス張りの空間を囲うように長椅子が設置されていた。どうやらこのガラス張りの中でショーが行われるらしい。人は私達以外いないのだけれど。

「やぁよく来たね!ハブ対マングースのショーにようこそ!」

別の部屋から出て来たのはこんがりといい色に肌を焼いた年配の男性だった。肩にはハブをかけて陽気な笑みを浮かべている。

「オイ、ジイさん!肩に蛇のってんぞ!!」
「大丈夫だ。このハブは友達だから絶対咬まねーよー」

おじいさんの友達であるハブが海藤くんの肩にかけられれば、海藤くんの必死な悲鳴が部屋中に響き渡る。猛毒のハブをかけられたら誰だってこうなるだろう。おじいさんは楽しげに笑っているけれど、性格はかなりの鬼畜に違いない。

その後他愛もないおじいさんのハブダジャレを長々と聞かされ、ようやくショーが始まるのかと思えば、目の前に置かれたのはマングースの檻ではなくブラウン管テレビとVHSのビデオデッキ。なんとも年代を感じる代物だろう。

急にみんなが白けてゆくのが肌身でわかる。おじいさん曰く、今は動物愛護法で決闘を生で見せることができないのだそう。仕方なく3分ほどのビデオを見れば、マングースの圧勝だった。見応えのなさにもほどがあるだろう。私達は無言で席を立つと出口へと向かう。

「あ、オニーチャン達ちょっと待って。ニーチャン達飴好きかい?」
「...飴...?...ハァ....まぁ普通に。」

それならいいものがあるとおじいさんが裏から取り出して来たのはハブ飴。ハブ飴とは強力なハブの粉末が練りこまれた飴らしい。まったく食欲をそそらないのはなぜだろう。

「い...いや、でも僕ら修学旅行1日目で...今お土産を買うと荷物になるし...」
「なんくるないさー」

海藤くんは断るのが苦手なのだろう。それにおじいさんの陽気な笑みを見せられては断れず、最終的に店を出る頃には両手いっぱいにハブ関連のお土産を持っていた。海藤くんからどれか買ってくれないかと頼まれたけど、丁重にお断りさせていただいた。

半泣きの海藤くんを残してバスに乗りこめば、何人か被害者を見つけてしまった。あのおじいさんは鬼畜な上にかなりのやり手と見えた。私もこれから気をつけよう。

こうしてバスは、私達を乗せて宿泊するホテルに向かって走り出した。





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