やってきたのは、家からさほど遠くない場所にある極々普通のアパート。
外が真っ暗なせいか物凄く禍々しい感じがするのは私だけではないはず。アパートの門の前には依頼者である青年が私達を迎えてくれた。青年の風貌はいたって普通で、年齢的に見て大学生くらいなのだろうか。
「よかった。来てくれたんですね。このまま帰られたら呪...どうしようかと思いましたよ。それじゃ、よろしくお願いします!」
今、少し不穏な言葉が聞こえた気がするけどきっと気のせいだ。
彼の住むアパートの部屋に案内される。彼の住居はアパートの二階で、鉄でできた階段を登る度にカツンカツンと金属音が闇に響くのは少し気味が悪く感じてしまう。昼間は何も感じないのに。
幽霊は信じていないのだけれど、雰囲気に飲まれると言うか...とにかく私は夜は苦手だ。健全な人間なら外を出歩かずにちゃんと布団に入って寝るべきだ。睡眠は大事!
扉に手をかけたところで青年は立ち止まってしまった。そしてこちらを振り返りゆっくりと口を開いた。
「あの...入る前に僕が体験して来たことを知ってもらいたいので話しても良いですか?」
「そういえば詳しく聞いてなかったような。ぜひ聞かせてほしいっス!」
話も聞かずに依頼を受け入れたのか、この人は。お人好しなのか、それとも霊能力者らしい依頼が来て舞い上がったのかはわからないけれど、ちゃんと仕事は選ぶべきだと思う。そうしたら私もこんなことには巻き込まれなかったのに...青年が本当に困っていそうだから、結果的には受け入れるしかなさそうではあるけれど。
怪奇現象は大まかに分けて3つ起きているらしい。大まか...とはどう言うことだろうか。それはこの際どうでも良いのかな。
まず1つ目、パソコンに映る霊の姿。
彼の日課はネットサーフィン。いつものように様々なサイトを巡っていて、眠気を感じてパソコンを電源を落とす。そして布団に向かうべく席を立とうとしたところ、電源を落としたはずのディスプレイには恐ろしい形相の幽霊が写っていた。
次に2つ目
夜中になるとトイレからうう...と男性の呻き声が聞こえてくる。扉をあけて見てみれば白装束と三角巾を身につけた男性がしゃがんだまま恨めしそうにこちらをじっと見つめていた。
最後の3つ目
最後はかなり面倒な幽霊のようで、いきなり電気が消えて扉もしまったと思ったら物が割れたり、床や壁を叩く騒音が響き渡る。そして気付いた時には背後に気配を感じて歩み寄ってくる。
確かに実際身に起きたらかなり嫌ではあるけれど、何だか怪しくもある。説明に不足分があると言うのか、イマイチはっきりしないところに引っかかりを感じてならない。
しかし、説明のおかげで何が起きているのかおおよそ把握できた。把握できたところでいよいよ私達はその幽霊退治に向かわなくてはいけない。気は進まないけれど、ここまで来てしまったし私の前には頼れる楠雄くんと霊能力者の鳥束くんがいる。心配することもないだろう。
青年によってゆっくり部屋の扉が開かれる。
さぁ...幽霊、私達と勝負だ...っ!
To be continued...