時刻は午前0時を過ぎたところ。
今日が金曜だからと言ってつい夜更かしし過ぎてしまった。本を読みだすと止まらなくなってしまうのが私の悪い癖だと思う。
そろそろ寝ようと机の電気を消そうと手を伸ばしたところ、何やら人の声が外から聞こえてくる。
夜中だと言うのにこんな時間に外にいるなんて、しかも割と話し声が大きいものだから本当迷惑だ。私も寝たいし、一言言ってやろう。こう言うのは自分では気付けないことだったりするし。
窓を開け放って二階から立ち話をする人達を見下ろす。街灯に照らされた姿は見覚えのあるいつもの2人。
「鳥束くんに...楠雄くん?」
私のことに気付いたのか、2人して私を見上げてくる。鳥束くんなんて元気よく手を振ってくるじゃないか。やっぱり霊能力者は夜が本職の時間だから元気なのだろうか。とりあえず目が合ってしまったからそのまま寝るわけにもいかない。私も下に降りて彼らと合流した。
「こんな時間に大声は迷惑だよ...と言うか、何でこんな夜中に2人して何をしてたの?」
「仁子ちゃん、起こしちゃったっスか?俺も同じような境遇なんで気持ちはすごくわかるっ!」
...話がよく見えてこない。助けを求めるように楠雄くんの方に視線を向ければ、やれやれと少し呆れたような表情をしている。彼の反応から見て早く片付く話ではなさそうだ。眠いけれどそれよりこっちのことが気になって逆に眠れそうにない。私は2人に話だけを聞かせてもらうことにした。
「...で、かくかくしかじかってわけっス。まったく、霊能力者が何でもできるって思わないでほしいっスよ。」
愚痴をこぼすかのように話し出した鳥束くんの話をまとめると、どうやら一時間前ほどに彼の修業先であるお寺に1人の男がやってきて鳥束くんに助けを求めたらしい。その来訪者は霊に困っていて何とか追い払ってほしいと言う。鳥束くんは霊能力者であれど霊と会話するくらいしかできないから、助っ人に楠雄くんを連れて行こうとしたとのこと。
何で楠雄くんに頼ったのかはわからないけれど、面倒くさそうな案件であることは何となくはわかる。
「へぇ...大変そうだね。私は話が聞けたから満足したし、寝るね。おやすみ。」
欠伸混じりに家に戻ろうとすると片腕ずつ彼ら掴まれてしまった。鳥束くんは、私が女子だから一緒に連れて行って何かしようとまたゲスいことを考えているのはわかるとして、何故楠雄くんまで?
恐らく自分も巻き込まれたから私も巻き込まれろ、と言うことだろうか。
「仁子ちゃん、一緒に行くっスよ!」
「ちょ...私は関係なっ!?しかも楠雄くんまでっ。」
私はそのまま引き摺られるように、来訪者の住むアパートまで連行されてしまった。