第30χ ゲスが来たりて霊を呼ぶ@




この世界にはかつては人であったが、様々な理由から人ならざるものになった存在がいると言う。俗にいう幽霊だ。

数ヶ月前にうちの学校に霊能力者が転校してきたけれど、彼がその力を持っているかは正直なところ定かではない。
一応霊能力について少し解説をさせてもらうと、霊能力とは霊や死者の魂などを感知したり、霊的な力で普通の人にはできないことをする能力を指す。この間、自慢げに話す鳥束くんから得た知識なのだけれど。

そんなことを考えていたら朝から彼に遭遇してしまった。噂をすれば何とやら、だ。彼は私の前方を歩いているため、まだこちらに気付いていないようだ。声をかけようと小走りで彼に近づいて行く。

「おーっス」

彼が振り向いて声をかけるものだからてっきりバレてしまったのかと思ったが、声をかけた先に人は1人もいない。もしかして幽霊がそこにいたのだろうか。私は霊感も強くないしからわからない。

それでも頑張ったら見えるんじゃないかとじっとへいを見つめていたら、鳥束くんはスタスタと歩いって行ってしまう。この際だからこのままつけて行って彼が本物かどうか確かめてみよう!

彼に気付かれぬよう背後をコソコソと歩く。尾行はこれで3回目だ。すっかり板がついたように思う。こんな能力は役に立たないし、要らないのだけれども。

鳥束くんがピタリと足を止める。私もピタリと足を止めて彼の様子を窺う。
遠目から見たら私はかなり怪しく見えるだろう。けれど、幸いにも周りには誰もいない。彼も自然と人がいない時間、経路を選んで歩いているのかもしれない。ん、少し霊能力者っぽい。

「あの娘のパンティーは何色か...見てこい!!幽霊!!」

何を言うかと思ったら曲がり角から出てきた女の子を指指しその台詞...彼は確かに霊能力者であるみたいだが、それ以前に犯罪者予備軍であることはよくよくわかった。
幽霊にも礼儀はあるらしく、無事失敗に終わったようだ。私の中で霊能力者より幽霊の好感度が上がった気がする。やっぱり恐ろしいのは死んだ人間より生きた人間だ。

「...っ、見てたんっスか!?アンタに見られるなんて!この事は斉木さんには秘密っスよ!」

私の存在に気付いたのか、鳥束くんはあわあわと慌てている。そんなに楠雄くんが恐いのか...そんな風には見えないのだけれど。そもそもなぜ私と楠雄くんがすぐに紐付くのか。まだ勘違いしているに違いない。

「楠雄くんには言わないし、前も言ったけど楠雄くんとはただの友達。さらに言わせてもらうけど私はアンタじゃなくて平凡仁子だよ。」
「そうだったっけ?...それより仁子ちゃんね、覚えたっス!」

本当にわかったのか不安で仕方がない。それになぜいきなり名前呼びなのだろう。...構わないけれど、呼ばれ慣れないからなんとなくむず痒い。

遠くで学校のチャイムが鳴っている。時計を見ればもうすぐ学校が始まってしまう。これ以上彼に構っている暇はない。私は学校に向かって走り出した。
後ろでちょ待てよ!と言われた気がするけど気にする必要はない。ただのキ◯タクだ。





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