第30χ ゲスが来たりて霊を呼ぶA




なんとか学校には間に合うことができた。
朝から変なものは見てしまうし災難だった。いや、これは完全に私が悪い。尾行しなければ鳥束くんのゲスなところも見なくて済んだし、学校もギリギリにならなくて済んだ。しかも危うく皆勤賞を逃すところだった...危ない危ない。

昼休みなり、お花摘みに行こうと廊下を歩いていると再び鳥束くんと遭遇してしまった。今日はそう言う日なのだろう。
気付いて欲しそうに手をブンブンと振っている。少し犬みたいで可愛いなと思ってしまった。いけない、彼はゲスの極み男子である事を忘れるところだった。

よくよく見れば鳥束くんの周りに3人女子がいる。なんだか浮かない顔をしているように見える。仕方ないと4人の輪に近寄って話を聞くことにした。

彼女達の中の1人の体操服がなくなったとのこと。それを鳥束くんが探そうとやる気満々らしい。
探し物なら人が多い方がいいと思って、たまたま通りがかった見知った私に声をかけたのだろう。探し物なら楠雄くんに頼めばいいのに。犬でもボールでも見つけてきてくれる。
彼が楠雄くんを呼ばないのは、きっと自分が体操服を見つけて彼女達にキャーキャー言われたいからだろう。霊を探すようにあたりを見回しながら歩いて行ってしまった。探すのならもっとちゃんとした情報が欲しい。彼とはいたら何かつかめるかもしれない。とりあえず私は彼についていくことにした。

鳥束くんが霊の話を聞いてたどり着いた答えは、体操服は無くしたのではなく盗まれたと言うこと。そしてその犯人は、体操服の入った巾着を持って今まさに二階の理科室に入って行った。

捕まえようと理科室に近付こうとすれば突然立ち止まる鳥束くん。何かと思えば、何もいるはずのない場所に話しかけている。恐らく幽霊が立ちはだかっているのだろう。幽霊が見えると言うのはかなり面倒だなと感じる。

鳥束くんはその場に立ち止まったまま動こうとはしない。幽霊に何でもするから見逃してくれとでも言われたのだろうか。ニヤリと鳥束くんがゲスな笑みを浮かべているのが見えた。これは私が止めなくてはいけない。

「だけど断るっス。確かにアンタの話には揺らぎましたよ。けど、この学校には何でも見通すめちゃくちゃ恐い超能力者がいるんスよ。そんなことをしたらオレその人に殺されちゃいますよ!!」

ゲスな彼とは思えない素晴らしい言葉に一瞬キュンとしてしまった。...それより超能力者?今、鳥束くんは超能力者って言ったよね。霊能力者がいるなら超能力者がいてもおかしくはないけれど...一体誰が超能力者なんだろう。

鳥束くんに聞こうと思ったら理科室の中に入ってしまった。中には誰もおらず体操服だけが残されていた。窓が開いていることから犯人はそこから逃げたのだろう。二階からでも逃げるのは大変だろうに。

窓から下を覗いていたら、いつの間にか依頼主である女の子達がやってきて鳥束くんは袋叩きにされていた。誰でもこの現場見たら彼が犯人だと思うよね。...可哀想に。

床にボロ雑巾のように倒れこむ鳥束くんの側にしゃがみ込んで様子を窺う。鼻血やら何やら出ていて何とも痛々しい。それよりアレについて聞かなきゃ!

「鳥束くん、さっき言ってた超能力者って誰のこと?」
「...白地にピンクのストライプ。」

それが超能力者のヒン...私は頭を思い切り叩いてやった。
それは今日の私の下着の色だ!!





*まえ つぎ#
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