第29χ 案ずるより産むが易しA




そうこうしている間に入った店で注文したラーメンが運ばれて来る。この店は店内も汚ければ店主も汚い。加えて料理も汚いのか。ラーメンのどんぶりがどことなくくすんで見えるのだが。中身にしても本当に食えるのか疑うレベルだ。そもそもここまで汚いと衛生的に完全に違反だろう。

勿論、僕はこんなもの食べるつもりはない。流石に2人もかなり引き気味な顔をしている。おっふ×4も出たことだし、照橋さんも拒否して帰るだろう。

何度も話が逸れて悪いな。戻らせてもらう。
彼女は一体いくつの能力を見てきたのだろうか。僕が使って来た能力のほぼすべてと思っていて、差し支えはないだろう。大体使う時には偶然にも側にいたからな。
それにも関わらず、周りの反応が変わらないということは他言はしていない証拠。もしかしたらまだ超能力と断定できてないから話すらできていない可能性もあるが。

さて...その状況で僕は何をすべきか。
現状はそのままでも問題はないように思う。僕も極力彼女の思い出を奪う様な真似はしたくない。なぜそんな気持ちになるのかまったくわからないが。
ただ、彼女が僕に触れた手を。僕が彼女に触れた手の感触が心地よかったのは覚えている。こんな時に彼女の心の声を聞こえたら、この僕の頭の中のモヤモヤは消え去るんだろうが。僕の超能力は欠陥だらけで本当に困る。

先程も述べたように万が一、彼女が僕について他者に話したりするようなことがあれば躊躇なく消し去ってやる。平凡さんの何もかもを...。

僕の斜め向かいからズルズルと麺をすする音が聞こえてくる。馬鹿な、こんな食い物に見えないものを食べてしまうのか照橋さん。
...どうやら彼女の完璧に演じきるという強いこだわりこそ完璧だったようだな。今回は僕の完敗だ。

それにしても照橋さんにしろ、平凡さんにしてもまったく女性という生き物は侮れないな。





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