第29χ 案ずるより産むが易し@




僕は今悩んでいる。
それもすべてあの出来事から始まった。いや....もうそれ以前から始まっていたのかもしれない。

あの薄暗い占いの館で、僕は確かに平凡さんと目があった。透明化しているにも関わらず、だ。
彼女がなぜ僕を認識できたのかも知りたいところではあるが、まず優先すべきことは彼女が僕にとって害をなすかどうか。
もしも害になる様であるのならば、平凡さん自体を抹殺するか、記憶を消すかのどちらかを選択しなければならない。なるべくなら記憶を消す程度に留めておきたい。彼女自体が消えるということは世界を捻じ曲げなければならなくなる。僕の力を持ってすれば捻じ曲げることなど造作もないがな。

「私も良かったらついて行って良いかしら?なんて!ちょっと図々しいかな?」

おっと、僕としたことが...迂闊だった。
平凡さんに悩まされていたと思ったら、今度は照橋さんと遭遇してしまった。彼女は下手に人の目線を集めるから可能な限り出会いたくなかったんだが。こう人混みが多いとテレパシーが誰のものであるかを聞き分けるのは困難に近い。やろうと思ったら相当の集中力を伴う。

「ふだんラーメンとか食い...食べるんですか?」

燃堂も照橋さんを前にしてすっかりキャラが変わっているじゃないか。誰なんだ君は。一方の海藤は中二病卒業する有様...まったく気持ち悪いったらないぞ。これが照橋さんを前にした時の普通の反応だ。まったく恐ろしい。

なんだかんだ話が進んで照橋さんがついて来てしまった。僕は今平凡さんのことで決断を迫られている。それに2人も一度に相手出来るほど僕も余裕があるわけではない。
なんとか彼女を引き剥がすことはできないだろうか。僕にも一欠片ほどだがプライドがあって、易々照橋さんの思惑にも嵌りたくはないという気持ちもある。
丁度、僕達はラーメン屋に行く。ラーメン屋にいけば流石に被った仮面をかなぐり捨てて帰って行くだろう。まったく...プライドの高い人間は扱いやすくて助かるな。

それよりも話を戻そう。
まずは整理も兼ねて、僕から見た平凡さんについて話す。平凡さんは僕と同種であることは間違いないと思っている。人混みや面倒ごとが嫌いだったり、本を読むことは好きだな。この間、アレ退治をしてもらった時に貸した本は喜んでもらえた様だ。返された本に付箋のメモが残してあって楽しかったと添えてあった。

ここからが大事なところだ。
普段僕は超能力のせいで何かと不便するのだが、平凡さんには通用していない様に見えている。長めに瞳に映したとしても彼女の身体が透けることは決してないし、心の声も聞こえてこない。
決して平凡さんを馬鹿と言っているのではなく、そういう超能力の通じない人間も世の中にはいるのだろう。今まで会ったことも聞いたこともないがな。





*まえ つぎ#
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