今、私の中でブームが来ている。
私は一度ハマり始めたら飽きるまでそれをやり続けなければ気が済まない質で、これを求めるのは二週間ほどになるだろうか。
そのブームというのが豆腐プリンだ。
先日、お母さんがダイエット中だけど甘いものが食べたいと買って来たのがソレである。私も試しにそれを食べてみたら、その味に感動してしまった。それから何個か買い溜めしては、無くなったらスーパーに買いに行くようになってしまった。
豆腐プリンがいかに優秀なデザートであるかを掻い摘んで述べさせてもらうと、まずダイエッター向きであるということ。乳、卵は使わず大豆だけで作られているため、一個で100Kcalと約30分歩けば消費できてしまうほど軽いのだ。
味はというと、豆腐というだけあって一口口に入れれば豆腐だとわかる舌触りなのだが、よくよく味わうと後からカスタードの品の良い甘さがやって来て、その甘さが満腹中枢を刺激してかなりの満足感を得られる。
そんな魅惑の豆腐プリンを今日もしっかり買い込んだ、私に抜かりはない。抜かりがあるとしたら買い込みすぎて買い物袋が重いということぐらいだ。あとは家に帰って美味なプリンを堪能するだけ。
帰り道に公園側の道を歩いていれば、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。今はプリンを持っているし、可能な限り面倒ごとには巻き込まれたくはない。
しかし、一度聞こえてしまったものは確認せずにはいられない。恐る恐る公園側に顔を向ければ、思った通り燃堂くんがいた。
「おー、平凡じゃねーか。ちょうどいいところに通ったな。ちょっと手伝ってくれよ。」
燃堂くんが大きな手を振って手招きをしてくるので、渋々そちらの方に向かえば楠雄くんと見知らぬ少年が一緒にいた。
「...で、何を手伝えばいいのかな?」
「オレの子分がボール無くしちまって相棒と探してたんだよ。」
なるほど、そういうことか。なんだかデジャヴを感じてならないのだけれど、少年がとても落ち込んでいるところを見ると相当大切にしていたものだったのだろう。ここまで来たら乗りかかった舟だ。一緒に探してあげよう。
「楠雄くんも前みたいに巻き込まれた側、かな。お互いなんでこんなに面倒ごとに好かれるんだろうね。」
いつものように閉口したまま佇む彼にハハッと軽く笑みを見せると、一瞬ピタリと身体が固まった気がする。...もしかして楠雄くんがボールをどこかにやってしまったのだろうか。