ようやく学生の業務である授業を終えて、帰宅の準備を始める。特にこれといって家に帰ってすることもないが、今日は学校にもいる用もなかったはず。
のんびり勉強でもしようかと考えていたところ、いつものように燃堂くんからラーメンへのお誘いを受けてしまった。別に良いのだけれど、ラーメンばかりでよく飽きないなと思う。私もラーメンは好きな方だ。けれど、重すぎて時々しか食べられない。
燃堂くんに参加する旨を伝えようとすると、今度は海藤くんに呼び止められてしまった。
「平凡、今日は招集があると言っただろう。」
「...そうだっけ。本当に行かなきゃダメ?」
困ったように眉尻を下げてじっと見つめ、少しでも抵抗していることをそれとなく伝えようとするも、その抵抗虚しく早く来いと手招きをしてくる。
渋々ごめんねと燃堂くんの誘いを断ると、怪訝そうにされてしまった。それもこれもすべて「翡翠の瞳」という輩がすべての原因だ。
遡ること数日前。
晴れた日の昼休み、日向ぼっこでもしようも屋上でのんびりとしているところ、息を切らして走り回る海藤くんと遭遇した。どうやら私を探して学校中ウロウロとしていたらしい。
そんなに必死になって探すほどの要件なのだろうか。何があったのかと問うてみると、翡翠の瞳から直々に私に招集に参加せよと指名を受けたらしい。
訳が分からず首を傾げていると、海藤くんが続けてこう説明してくれた。
私はダークリユニオンに対抗する唯一の手段であり、武器である金色のアドリアネの魂が転生した存在なのだと言う。だから、私も翡翠の瞳達の仲間になって一緒に悪の秘密結社ダークリユニオンを壊滅しようと。さもなければこの世界はダークリユニオンにより壊滅の危機に晒されるとのことだ。
どうしたら良いのだろうか。
ここは馬鹿言わないでほしいと笑って断るべきなのだろうか。しかし、真剣な眼差しが私を見つめている。見つめられた箇所に穴でも空きそうな気分だ。
その状態に耐えられなくなって、つい了承してしまった。翡翠の瞳もある程度付き合えば、飽きて解放してくれるだろうと思ったからだ。
そんな経緯で今、私達は招集場所である教室の前へ来ている。
「スリサズ=イサ=ハガラズ...」
海藤くんが呪文のような言葉とともにノックをすれば、扉が開いて中から声が聞こえてくる。海藤くんの後ろに隠れながら中に入れば、1人の男が眼鏡越しにじっと座ってこちらを見つめてくる。