第10χ 常識世界と非常識少女A




「ワシのどこが校則違反じゃあ!!!んだァ?!」

松崎先生の首根っこを掴んで怒声をあげているのは三年の金剛先輩。噂でしか聞いたことないけど、かなりのワルらしい。見た目からしてそうなのだろうとは思うけど。
金剛先輩の服装は腹部にサラシを巻いていて、そこには小太刀だか木刀のようなものが差し込まれている。更に肌の上からは袖を切り落とした制服のシャツを羽織っている。校則違反超えて世紀末の匂いがすごくするのだけれど。

金剛先輩が松崎先生の首元を掴むと、ビリビリと服を引き裂いていく。松崎先生の衣服は際どいところを残してすべて裂けてしまった。
流石に私も思春期を真っ盛りの女子だし、成人男性の裸体を見るのはかなりの衝撃になる。咄嗟に楠雄くんの後ろに隠れると少し手を広げて庇ってくれる仕草をしてくれた。

見えてはいないがドカッ、バキッと聞こえてはならない音が聞こえてきたり、周りの生徒も鉄パイプで何度も殴ってるとか、先生死ぬぞとざわつき始めている。
想像するのも恐ろしくて、楠雄くんの服を掴む。最悪だ、朝から何でこんなことが起こるのだろうか。

「私に任せなさい。」

止めに入ろうした燃堂くんに静止の声をかけたのは、別の先生。聞き覚えない声だから今まで関わったことのない先生だ。
恐る恐る楠雄くんの肩越しに覗いてみると、その先生は金剛先輩が振り回す鉄パイプを持って軽々と先輩を持ち上げている。仕上げは首の裏をトンとするだけ。先輩は気絶して倒れてしまった。

トンとした先生が松崎先生に話しかけている。
松崎先生を見て見れば、服を破かれて死ぬほどに鉄パイプで叩かれたはずなのに、打撲痕と血が滲んだ痕しか残っていない。なんということだろう。

先生が無事だったのは凄く安心したけれど、これは絶対におかしい...もしかしたら私がおかしいのだろうか。

「違う、私は...おかしくない。」

思わず呟いた言葉にハッとして口を塞ぐ。
楠雄くんに聞かれてしまっただろうか...掴んでいた制服を離して玄関へと駆けて行く。背中に楠雄くんらしき視線を感じたけど知らぬふりをした。

気づいてしまったら戻れない気がしたから。





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