第10χ 常識世界と非常識少女@




「なんだそのだらしない制服の着方は!?」

朝から投稿する生徒を捕まえては目を皿のようにしてチェックしていく松崎先生。相変わらず朝から元気な先生だ。こっちは眠たくて仕方がないのに。

今日は学校全体で抜き打ち身体検査を行なっている。しかし、あくび混じりに先生の前を通過しても声すらかけられることはない。
当たり前の話、私は極々「普通の」生徒なのだから。

突然、ふとした疑問が頭を過る。
松崎先生の指導を受けるのは制服を乱していたり、手荷物の中に学校と関係ないものを入れている生徒だけなのだ。もっと注意すべきところがあるはず。

例えば髪の毛。うちの生徒は個性を主張するように様々な髪の色をしている。私のような黒色はむしろ少数派だ。
一応みんな地毛ではあるみたいなのだが、私が幼かった頃はみんな黒かった記憶がある。入園式の写真を見ればすぐにわかるはず。けれど、小学校に上がる頃にはみんな変わってしまった。幼心に友人や家族になぜ髪の色が変わったの?と尋ねたことがあった。
その答えとして返ってきたのはそうなれば可愛くなれると思っていたらなった、とのこと。確かに私は髪の色が変わればいいとは思ったことがない。黒が当たり前だと思っていたから。
私の頭が硬すぎるのだろうか...いや、そんなことはないはず。他にも違う点はある。

私の前にはいつの間にか楠雄くんがいて、隣には燃堂くん。何やら話しかけているように見える。

「うわっ、危ないー!!」

金属音がしたかと思えば、野球ボールがこちらに飛んできて燃堂くんの顔面に直撃した。グシャっと生々しい音と共に歯が数本飛んだように見える。
燃堂くんは一度倒れたものの、すぐに元凶である野球部に文句をつけるために立ち上がっていた。先ほど顔から血が吹き出して歯が飛んだはずなのだが、ぶつけた箇所のみが赤くなるだけで済んでいる。

不自然な点はここ。
傷や壊れたものがすぐに治ってしまうこと。
友人が指を怪我した時も少し舐めただけで何事もなく生活していたし、服を引っ掛けて破いてしまった子を見たことあるが、数分後には何もなかったかのようになっていた。見たことだから間違いはない。

けれど、この法則なるものはなぜか私には適用されないのだ。転んで怪我したら一週間は治らなかったし、病院もよく通うから中学の頃は病弱だとからかわれてしまった。
服もそうだ。幼い頃に転んでお気に入りのパンツの膝を破いてしまったことがある。それも直ることはなかった。同じ人間なのに、こうも差が出るものなのだろうか。

そういえば楠雄くんの髪もピンク色で個性的だなと思う。黒も似合いそうな気がするけど、これはこれで可愛いから有りだと私は思う。それはそうと楠雄くんに朝の挨拶をしておこう。

「おはよう、楠雄くん。今日も頑張ろう。」

コクリと頷いて応えてくれる。簡素な返しだけれど...うん、やっぱり嬉しいな。





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