第9χ LOVE FANTASY(事件編)B




あまりにも予想外の光景と部屋に充満する血の香りに、息が詰まりそうなる。
一刻も早く離れたいが救急車が来るまではここを離れることができない。この間を利用して、何故このような惨事が起きたのかを探ることは出来ないだろうか。部屋の中を少し探ることにした。

僕のある超能力を持ってすれば簡単に解決するだろう。
しかし、僕がこの能力を発揮するのはもう少し先の話になるから使うわけには行かない。勿論、僕の意思ではなく作者の意思だ。

何か情報になるような手がかりはないだろうか。
最初に目に留まったのは平凡さんの指に血が付着していたこと。それ自体には何も問題はないだろうが床に血で何かを書き残した跡があるからだ。
これがダイイングメッセージというものだろうか。いや、平凡はまだ生きている。ダイイングという言葉は相応しくない。
床に書かれたメッセージは「十」のように見える。腕が相当痛んだのだろう。指が震えたのか字がよれている。彼女はそのような中で何を書き残したかったのだろう。彼女の口から聞くことができないのがもどかしい。
こればかり見ていては拉致があかない。他に手がかりを探す。

僕としたことが動揺していたせいで気にしていなかったが、平凡さんの部屋を見るのは初めてだ。設定上での恋人だからな。無駄のない中に女子らしさが散りばめられていて平凡らしいと思った。
それに部屋には血に混じって女子特有の香りが漂っている。香水とかそういうキツイ匂いではなく、柔らかな...強いて言うなれば太陽の匂いというべきだろうか。心なしか落ち着くのを感じる。
僕は決して恋に落ちることはない。それは心の声と見た目で辟易としているからだ。だが、平凡さんなら悪くはないのかもしれないと心の片隅でふと思ってしまった。

救急車が来る気配はまだ来ない。もう少しだけ手がかりになるようなものをもう少し探そう。
机の上には卓上カレンダーが置いてある。今日は何か予定が入っているようだ。

「謎の美少女、知予ちゃんと買い物」

僕は謎の美少女の正体を知っているが、彼女も話に登場していないため伏せられている。これも作者の意図だ...何を今更だと思うが。これで彼女は謎の美少女と夢原さんの3人出かけようとしていたことがわかった。

まだ情報が足りない...この部屋に情報を得る方法がもう1つある。それは彼女の携帯だ。
流石に携帯を見るのは憚れる。個人情報の塊だからな。しかし、見ない限り情報はこれ以上増えることもないだろう。警察に任せるという手段があるがこの惨劇を見て結果だけ待つというのは、僕の気が済まない。

彼女の携帯を手に取る。彼女の携帯は今で言うガラパゴスケータイであるからロックなどかかっているはずはない。携帯を開いてボタンの操作を行う。
まずは着信履歴。昨日謎の美少女と話した形跡しか残っていない。彼女はこまめに記録を消すタイプなのだろう。

そしてもう1つはメール。差出人に見覚えのある1人の名前が乱立している。

「海藤」

確かここでの設定では平凡さんの元彼だったか。僕と言うものがありながら元彼とやりとりをしていたのか。確かに設定上ではあるが、恋人である以上元彼とのやりとりにいい気はしない。会ったらシメておくか。
最新のメールの中身を確認してみれば、どうやら海藤の頼みで夜に会う予定になっているようだ。これでまた1つ情報が増えた。

最後に気になるのがサバイバルナイフ。彼女がこんな特殊なものを持つわけがない。加害者の持ち物なのだろう。それも探る必要がある。

目につくものといったらそんなものか。
外からようやく救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきた。あとは公的機関に任せるとしよう。

To be continued ...





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