第5χ Love Attack!A




その後、2つの作戦の他にも知予ちゃんの多数作戦を見届けて来たが、全てが見事読まれたように失敗に終わって行った。
結局、最後まで手応えなく次々に敗れあっという間に下校時間になってしまった。

外は知予ちゃんの心を映すように土砂降りの雨が降っていた。知予ちゃんの表情は暗く沈んでいたが、最後の作戦が思いついたのか、ハッとした表情を浮かべると挨拶1つ残して鞄を持って去って行ってしまった。

朝の天気予報は曇り止まりであったはずだったのに、そんなわけで私もうっかり傘を忘れてしまっていた。廊下の窓から外を見下ろして知予ちゃんの作戦が成功するのを祈りながら仕方なく雨が上がるのを待つことにした。

待てども待てども楠雄くんは知予ちゃんと帰る様子は見られない。掃除当番も今日はないはずなので、もしかしたら先に帰ってしまったのだろうか。しかし、下駄箱の側にいるなら知予ちゃんは靴を確認しているはず。先生に授業の内容を質問したりしているのかもしれない。楠雄くんはいつも真面目に授業受けているし。

ぼんやりと彼のことを考えているうちに空に光が差して、あんなにも土砂降りだった雨が止んで行く。やっと帰れると足元に置いていた鞄を拾い上げると誰かの足音がする。そこにはびしょ濡れの楠雄くんがいた。

「ど、どうしたの!そんなにびしょ濡れになってっ」

鞄から大きめのタオルを取り出すと髪と頬をそっと拭いてみる。避ける様子がないみたいだから嫌ではないみたいだ...よかった。

「予備でいつも持ち歩いているタオルだから汚くはないよ。だからこれ使って拭いて?」

冷え切った楠雄くんの手を取って、タオルをその上に置いてみる。ふと頭を過ぎったハンカチの件。今日こそ気になっていることを聞いてやろうとそっと口を開く。

「あの...楠雄くん。私、少し気になることがあって...」

言葉を慎重に選びながら告げようとするも、視線を合わせた先の楠雄くんの瞳が鋭くなるのを感じて、それ以上何も言えなくなってしまった。

「....やっぱりなんでもない。風邪引かないように気をつけてねっ!」

私は楠雄くんから逃げるように去って行った。
なぜあんな目をしたのだろうか。楠雄くんが余計に何考えているかわからなくなってしまった。雨は晴れても私の心の中はしばらく晴れることはないような予感がした。





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