第44χ 脳筋派燃堂 VS 頭脳派海藤A




一通りゲームを満喫できたのか、ようやく対決する気になってくれた。ゲームは何にするかまた揉めていたようだけれど、楠雄くんに一任する事でどうやら先に進めそうだ。こっちとしては早く終わらせて欲しいのだけれど。お腹空いたし、家に帰りたいし。

楠雄くんが選んだのはエアホッケー。
念のためエアホッケーについて解説すると、盤上でプラスチックの円盤(パック)をマレットという器具で打ち合うゲームで、パックを相手のゴールに9回入れた方が勝ちとなる。
簡単見えてこれが中々難しい。パックがどの角度、どの速さで飛んでくるか瞬時に計算できるならいいが、常人にそれができるはずがない。瞬発力と一瞬の判断が要求される中々高度なゲームだ。
私の勝手な予想をすると多分燃堂くんが勝つと思う。戦略を立てるのは先程も述べたように難しい。頭脳がダメなら力押ししかない。力なら海藤くんより燃堂くんの方が圧倒的に上だからだ。

試合初めからガコォッと大きな音を立ててパックがゴールに落ちた音がする。予想通り、先取したのは燃堂くん。やはり力が制すゲームのようだ。それに頭脳の海藤くんがどう対処するかが見ものではあるけれど。

彼が編み出した技はダブルマレット。要は2つマレットを使ってゴールを防ごうという魂胆だが、反則だ。けれど、力で勝てない以上は仕方ないのかな。燃堂くんも気にしていないというか...普通に驚いているだけだし。まぁ、普通に破られてしまったから無意味だし許そう。

「パックが落ちてこないだが。全く...貴様がバカ力でやるから...貴様の方にいっていないか?」
「いや...こっちも来てねーぞ...?」
「喰らえ!!メテオスマーッシュ!!!」

燃堂くんが取り出し口を見ている間に海藤くんが隠し持っていたパックを打ち込んで点を稼ぐ...なんとも汚い。汚いけど、一方的な試合よりか見ているこっちも楽しめるし、何より楠雄くんが黙認している。そこに私が文句をつけて場を白けさせるわけにもいかない。ここは同じく見守るとしよう。

その後も海藤くんの汚...頭脳プレーで燃堂くんを翻弄し、力の差をものともせず得点を重ねていった。そして一進一退の攻防の末、いよいよマッチポイントまできた。きっとこの一球で全ては決するだろう。色々あったけど、最後ともあって私もドキドキしてきてしまった。
パックを持つのは燃堂くん。これは海藤くんが危ういかもしれない。

「ギザギザアターック!!」

ギザギザアタックとは強く壁にパックを当てる事でどこからやってくるのかを予測不能にし、相手を翻弄する技だ。相手を翻弄することはできるが、壁に複数回当たるので相手ゴールに近づく頃には力が弱まってしまうのが弱点となる。
そのおかげで海藤くんはそのパックを打ち返すが、見事空振りをして威力弱く燃堂くんのコートへ。
しめたとばかりに燃堂くんが打ち返そうと腕を伸ばした刹那、海藤くんはパレットを飛ばす。それがパックに当たると綺麗に燃堂くんのゴールに入っていった。勝負は決した。

「よっしゃー!!俺の勝ちだー!!」
「どんな手でも勝ちは勝ちだから...。くー!負けたぜ!ちくしょー!」

私には燃堂くんの方が勝ちに見えたのは気のせいだろうか。まぁ、2人の気も済んだようだし、いつの間にか喧嘩していたのも嘘みたいに仲良くなっている。この際、勝敗を気にするのはやめておこう。

「よっしゃーじゃあプリ撮ろーぜ!!」
「ほら、斉木も平凡も来いよ。」

なんだろう...この微笑ましい光景は。仲直りの印なのか。

「なんかよくわからないけど、行こうか楠雄くん。」

みんなでプリクラ機の中へ。
入ったはいいけど、場所取りで喧嘩し出すのはやめて欲しい。これじゃ4人映れな...っ!

カシャ!

綺麗にプリントされた写真には燃堂くんと海藤くんが喧嘩する姿と、それに押されて咄嗟に楠雄くんに抱き着く私の姿が。すぐ謝って離れたけど、こうやって写真に残るとなんとも恥ずかしい。
けど、写真として思い出を残せたのはとても嬉しい。今度は絶対に無くさないように、この写真は私の宝物にしよう。





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