第43χ 独りじゃないということ@




私がはっきりと記憶しているのは、高校1年生の終業式まで。なのに、朝ベッドから起きて日時を確認してみると、今は2年生の終わりの時期まで来ていた。
もしかしたら交通事故にあって記憶喪失になってしまったと言う線も考えたが、身体を見ても怪我した様子もなく、その線はあり得ないという結論に至った。

私のことを知る最後の頼りであるカレンダーをペラペラとめくってみる。私はいつもカレンダーにその日の出来事を記録するようにしている。
勉強としての記憶はしっかりできるのに、なぜか人間関係に関する記憶はすぐに忘れてしまうからだ。それで一度痛い目を見たこともあって、それからメモに残すようにしている。
それでもそのメモというのは誰と何したくらいのことしかなく、あまり情報になり得るものはなかった。

続いて、学校でもらったプリントの確認をし始めた。またすぐに学校が始まるのに、何も情報が無ければ対応できなくなってしまう。プリントを漁っていれば、その中からクラスの割り振りが書かれたものを見つけた。私は2年巛組で、同じクラスの生徒も概ね把握することができた。
カレンダーと照らし合わせてよく交流のあった人物も知ることができた。まだ不安に思うことは多々あるけれど、なんとかやっていけるだろう。

記憶を無くしてから初めての学校が始まった。
初っ端から、2年生が使う下駄箱の位置がわからず少しウロウロしてしまったけど、偶然にも知予ちゃんが登校して来てくれたので、さりげなく声をかけてみる。その流れで教室まで一緒に行くことで無事にたどり着くことができた。
教室に向かう途中、今期放送のドラマが面白かったと話題を振られてしまって焦ったけどそれもうまくかわすことができた。1年の以内に起こったことは私が把握できていないところ。ここ一年のトレンドは頭に入れておかなくちゃ。

教室に入って今度は席に迷ってしまった。カレンダーには席替えをしたとしか書いていないから、どこが私の席なのかわからない...これは困った。あまりキョロキョロとしても教室にいる誰かに怪しまれてしまう。目立つことが苦手だから、あまり人に目をつけられたくはない。焦りで握った手にジワリと汗が滲んでくる。

...窓際、後方三列目...

「...知予ちゃん、今何か言った?」
「え、何も言ってないけど。」

頭の中からふと聞こえて来た言葉を確かめるように声をかけてみたけれど、どうやら声の主は知予ちゃんではないようだ。私の空耳なのだろうか...けれど、その声が正解な気もしてくる。恐る恐る声が教えてくれた席の方へ。
その机の中には私の名前が書かれたノートが入っていた。どうやらこの席で間違い無いらしい。ほっと安心して席に着く。それからすぐに先生がやって来て授業が開始された。

授業についていくのもなかなか大変だった。なんせ一年分学んだことが全て抜け落ちているのだから。必死にノートを取って、余裕ができたら教科書に一通り目を通して流れを掴むようにした。
一生懸命理解に努めたから、時間が過ぎるのがあっという間に感じた。家で予習復習を繰り返せば授業は何とかついていけるだろう。




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