第42χ 波乱起こるか、魔のテストA




「オウ、オレも勉強全くやってきてねーぜ」

突然加わってきた燃堂くんは相変わらずで、本当に大丈夫なのかこっちが心配になってきてしまう。そもそも彼はどうやってこの高校に合格したのだろうか。高校は中学と違って試験があって、大体同じくらいの成績の人が集まりだと思っているのだけれど。...推薦?でも、燃堂くんは部活やっている様子ないし。まったく不思議で仕方がない。
私がこの高校を選んだのは単に家から30分と近いからだ。もっと高いところも行けたけど、別にどうでもいいと思っている。大学も行こうと思えば試験でなんとかなるし、何よりここに来てラッキーとさえ思っているくらいだ。そのおかげで楠雄くんに出会えたのだから。
教室内で次のテストまでの間、雑談をしていれば先生が入って来た。まだテストの時間まであるはずだけど。

「おーい、燃堂。言い忘れてたんだがお前... このテストで赤点3つあったら...留年だから。」

笑顔だったみんなの表情が強張る。確かに留年言われて笑っていられる人はいないだろう。海藤くんなんてもう留年確定と言わんばかりに燃堂くんを慰め始めている。燃堂くんの学力から考えて難しいとはと思うけれど、可能性はゼロじゃない。

「りゅうねんって何だ?」

一生懸命、諦めるなと頑張ってフォローし続けていた灰呂くんがついに諦めてしまった。Mr.ネバーギブアップの名が泣いてしまうよ、灰呂くん。
しかし、もう勉強している暇はない。彼にできることはきっと神頼みだけだろう。

「でーじょーぶだよ!!テストくれー!オレっちには秘策があるからよ!」

そんなにみんなを他所に燃堂くんは自信満々だ。そんな彼の秘策と言うのは、懐から取り出したのはごくごく普通の鉛筆。少し違うのは鉛筆の先とは逆がわが削られていて、アからオが1つ1つに書かれている。これを転がして答えを書くつもりなのだろうか。まさに神頼み。終わった...みんなの心の声からそう聞こえた気がする。

そんな雑談をしている間に次のテストが開始されてしまった。今は人のことを気にしている場合じゃない。まずは自分のテストに集中しなければ。...と言ってもこれも私の敵じゃない。

「頼む...お、アだな」

後ろからブツブツと声が聞こえる。燃堂くんが秘策の鉛筆を転がして解答を書いているようだ。次は何だと一々声に出さなくてもいいのに。
それにしても...当たっている。こんな偶然があるのだろうか。もしかして私の答えが間違っているんじゃないかと、もう一回見直してみるも間違いではなさそうだ。燃堂くんに神が舞い降りたというのか...もしかしたら留年は逃れられるかもしれない!

そして数日後、テスト結果が廊下に張り出された。
落胆に声をあげるもの、点数の良さに歓喜の声をあげるものとが入り混じっている。
灰呂くんは181人中6位で海藤くん51位。やっぱり灰呂くんの方が良かった。流石学級委員というか、文武両道できる彼はすごいと思う。海藤くんもかなり奮闘した方だと思う。素直に誇るべきだ。

問題の燃堂くんは...何と90位!みんなで何度も見直してもその順位は変わらない。恐るべき運頼み。この順位なら留年の話もないだろう。無事に一緒に卒業できそうで安心した。
そして楠雄くんは惜しくも91位だった。彼ならもっとできる気がしていたのだったから少し意外だった。まぁ、勉強が全てじゃないからね!

私?私の順位は勿論...。

「今回も平凡仁子が一番か。しかも満点とか...一体どんな女子なんだ?」
「え、オレも知らねぇんだけど。」

地味を徹底した結果がこれである。嬉しいけど、実際に言われると何だか凹むな...。





*まえ つぎ#
もどる
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -