第4χ 迷子の犬を探せ!A




幼女に話を聞いてみると、電柱に繋いでいた犬がいなくなってしまったらしい。

「ヨッシャ!!その犬、オレ達が見つけてやんよ!」

最初に言いだしたのは燃堂くん。見た目に反して中々情に厚い人。みんなは馬鹿だからというけれど、私は自分に正直でまっすぐな生き方ができる彼は素敵だなと思う。...それを理解するのは幼女にはまだ難しいのかもしれない。燃堂くんの顔が少々恐ろしく見えたようで、半泣きで防犯ブザー鳴らそうとする手を海堂くんと楠雄くんが必死に止めてよしよしと頭を撫でている。

2人とも優しいというか、幼い子の扱いに慣れているように見える。楠雄くんはともかく海藤くんには弟ないし妹さんがいるのかな。
微笑ましい光景をぼんやりと眺めている間に、いつの間にか燃堂くんは犬探しに行ってしまった。
続いて走り出したのは海藤くん。幼女から犬の情報を書き留めていたけど、あのメモでわかるのだろうか。ちらりと見えたけど、画伯の雰囲気か満ち満ちていた気がする。最後に残されたのは私と幼女と楠雄くん。

楠雄くんの目にはあからさまに犬を探すような気迫は感じられない。もともと面倒くさそうな顔していたからこのまま帰るつもりなのだろう。それはそれで仕方がない。

「ウィンド見つかる?お兄ちゃん達がウィンド見つけてくれるよね?」

無邪気な瞳が私と楠雄くんを捉える。
恐らく今日中に2人だけで目的の犬を見つけることは不可能だろう。私だってまったく自信がないのだから。けど、このままにしておくわけにはいかない。

「大丈夫、私も手伝うから。君と楠雄くんはここで待ってて。」

幼女の頭を人撫でして歩き出そうとした刹那、不意に腕を掴まれる感覚がして振り返ってみれば楠雄くんに止められてしまった。顔には不本意だが手伝うと書いてあるように見える。

「...手伝ってくれるの?ありがとう。楠雄くんがいればすぐに見つかるような気がするよ。」

嬉しさに思わず頬を緩めると少し視線を外されてしまった。私の顔に何かついていたのだろうか。掴まれた腕がするりと解かれてゆく。離れて行く手が名残惜しい...けど、今は甘い雰囲気に浸っている場合ではないのだ。

「私は向こうを探すから楠雄くんは...」

首をしきりに振って何かを伝えようとしている。

「...もしかして、私がこの子とお留守番?」

楠雄くんが頷く。どうやら正解らしい。
確かにもう空はオレンジ色に染まりかけていて、あと数時間で夜になってしまう気配が漂っている。このまま幼女を1人にしておけないという配慮だろう。楠雄くんの指示のまま私は幼女と待つことにした。

空が薄暗くなりかけているにもかかわらず一向に3人が帰ってくる様子はない。今日は見つからないだろうと幼女に伝えようと口を開こうとした瞬間、遠くから犬の鳴き声が聞こえる。

「ウィンドおお!!」

どうやら目的の見つかったようだ。犬を抱えているのは楠雄くん。どうやら彼が一番最初に見つけてくれたらしい。
幼女の嬉しそうな満面の笑みに楠雄くんも、どこかしら笑っているように見える。本当に見つかってよかった。
そのすぐ後に海藤くんと燃堂くんも帰って来て、私達の人助けは無事成功を収めることができた。
代わりにラーメン屋にも不穏な風を探しに行くこともできなかったけれど。それは今度、私がみんなを誘っていけばいいか。楠雄くんは来てくれるだろうか。





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