第4χ 迷子の犬を探せ!@




私は今、どうしようもなく落ち着かない。
左隣には燃堂くん、右側には海藤くん、そして目の前には楠雄くんがいて私の前方を囲うように歩いている。

どうしてこうなったかというと、遡ること数十分前のこと。
今日は早く帰って知予ちゃんに頼まれていた小説のネタを考えようと下駄箱で靴を履き替えていたところ、燃堂くんからラーメン食いに行こうと誘われたのだ。なぜ私を誘うのかと恐る恐る理由を聞いてみたところ前回の話でヘビに噛まれた仲間だからだそうだ。

いや、私は噛まれていないよ。噛まれたのはきっと燃堂くん、君1人だよ。

私はまだ燃堂くんとまともに話をしたことはない。悪い人ではないのはなんとなくわかる。...が、正直そんな関係の人間と食事をしたいとは普通の人間なら思わないだろう。丁寧に断ろうと声をかける頃にはもう遅く、燃堂くんは先にドンドン歩き出してしまっている。ここで勝手に帰ってしまうのはなんとも心苦しい。やむ終えず彼について行くと、同じくして楠雄くんを誘う海藤くんとバッタリ遭遇し、今に至る。

顔は見えないけどあからさまに楠雄くんの背中からは僕を巻き込むなと黒々としたオーラを発しているのがわかる。華奢ながらも女性よりやや幅広な背中をじっと見つめながら、私もどうしたものかと考えてみる。考えれば考える程にどうして私は場違いなところに来てしまったのかと後悔の念しか浮かんで来ない。下校する生徒からヒソヒソ聞こえてくる声に耳を傾けてみれば何であんなメンツに女子が混じっているのかとか、アイツらはどういう関係なんだとか...私達は今、穴があったら入りたいレベルなほどに注目されている。

この気不味さに耐えきれず帰宅を試みたものの、燃堂くんと海藤くんから呼び止められてしまった。楠雄くんからも1人だけ逃げるなと言わんばかりにジリジリと熱い視線を感じて、とてつもなく痛い。楠雄くん、瞳孔開き気味になってるから!
こうなってはもう逃げられない。
そんな私のモヤモヤとした気持ちを余所に相変わらず海藤くんと燃堂くんはラーメン行くか、不穏な風を探りに行くかで揉めてるし。私がすがれる相手はもう1人しかいない。

「...私のせいで楠雄くんも変な注目浴びちゃったかな。なんか、ごめんね。」

申し訳なさそうに瞳伏せ気味に彼の様子を窺えば首を振って応えてくれた。言葉にしていないから憶測だけれど、きっと全くだと暗に含みながらも気にするなと言ってくれたのだろう。素っ気ないけど、相変わらず楠雄くんは優しくて、益々本当に好きだなって思えてくる。

ここはもう覚悟を決めてこの3人と楽しむしかない。そう気持ち切り替えたところ、どこからともなく聞こえてくる幼い子の鳴き声。

みんなであたりを見回せば、電柱の側で膝に顔を押しつけるような形で泣きじゃくる女の子がいた。私達は顔を見合わせるも、このままにしてはおけないと彼女の話に耳を傾けることにした。





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