第38χ 乙女 × Chocolate@




平凡仁子の場合

何もせずに1日を無事終える...と思ったら大間違い。今日の私はひと味もふた味も違う。
昨日、学校の帰りにスーパーに寄って材料を買い集め、その次に立ち寄った雑貨店ではラッピング用品も買った。
家に帰ればすぐにレシピ本広げ、試行錯誤を繰り返してようやく作り終えたそれ。ラッピングを丁寧にすればもう市販品にしか見えないくらいの出来になった。

私の料理スキルは、自分で言うのもアレだけれど中々のものだと思う。共働きの両親のために時間があれば作ったりしているから、それで独学であれど鍛えられた成果だ。

ここまできたらもうお分かりだろう。今日はバレンタインデー。私はチョコを手作りしていたのだ。手作りと言っても重いものではなくて、いわゆる友チョコというものだ。
私はあまり行事にはしゃぐ方ではないけれど、去年は知予ちゃんがわざわざ私のために作ってきてくれたので、そのお返しも込めて今年は頑張ってみた。

いつもの時刻にたどり着いた教室。
もうクラス内はバレンタインムードで、女子は男子や友達とチョコ交換をし、男子は女子がチョコを持ってくるのをギラついた目で見つめている。ここはもうすでに戦場と化している...!

「知予ちゃんおはよう。これ、去年のお礼を含めて作ってみたんだけど...受け取ってもらえる?」
「本当に?!勿論、仁子ありがとう!」

知予ちゃんには喜んでもらえた模様。去年のお礼に作ったはずなのに、今年も知予ちゃんからお返しの友チョコをもらってしまった。...来年も頑張って作らなきゃ!

知予ちゃんに友チョコを渡すという一番の使命は果たしたが、私にはまだやることがある。まだチョコを渡し終えていないからだ。受け取ってもらえるかはわからないけれど、せっかく作ったからには渡すだけ渡してみるつもりだ。私は勇気を振り絞って、その人達がいる場所へ脚を向けた。

まずはもう1人の女子友である、照橋さん。
流石、彼女をいつも以上に男子が周りを囲っていて、中々近づけそうにない。しかし、何とかしてこのお礼チョコを受け取ってほしい。私は気合を入れ直すと、男子の間割り入って彼女の元へ進んだ。

「やっとたどり着いた...照橋さん、去年はお世話になったからお礼チョコ作ったんだ。受け取ってもらえるかな?」
「...私に?えぇ、喜んで。私は用意していないんだけど。ありがとう。」

大丈夫と一言添えれば、チョコを受け取ってくれた照橋さんの顔に笑みが浮かぶ。うん、やっぱり可愛い。周りの男子の心も見事に掴んで一層騒がしくなった。照橋さんのへ用が済んだのでまた男子の中を掻き分けて輪の外へ。

やっぱり照橋さんは楠雄くんに渡すつもりなのかな...?ちょっと複雑な気分だけれど、チャンスは皆平等だ。ここで1人で嫉妬していても仕方がない。
そんなことより次へ行かなきゃ。授業が始まってしまう!





*まえ つぎ#
もどる
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -