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 もう一度言おう、この人はすごい。
 だが、きっと私がこの人に思う"すごさ"というのは他の生徒たちとは違う。これは確信していることだ。私が彼に惹かれている理由、それは……。

 彼の持つ深い闇。

 私が興味を示す程の、深くて……底の見えない、真っ暗な闇。
 私は隣座り、長い脚を組んだ彼をじっと見つめた。

「? どうしたのかな、ミス・ブラック」

 あぁ、違う。その顔じゃない。外面用の笑顔なんて見たくない。一体その笑顔でどれだけの人を騙してきたのやら。

「リドル先輩、単刀直入に言わせていただきます。私はあなたに興味がある」

 彼の笑顔が崩れて、きょとんとあどけない顔になった。私はただ、この冷たい灰色の眼をあなたから逸らさない。

「知りたいんです、……闇に染まったあなたを、ね」
「! ……」

するとどうだろう、彼は妖艶に口元を吊り上げ、冷ややかな眼で私を見つめた……。暖炉の火が映ったのだろうか、一瞬彼の瞳が赤く光ったような気がした。

「……ふふっ、いいだろう。僕に付いて来るか?オリアーナ」

 私が興味本位だけで動いていることを彼は気づいただろう。なんたって彼はすごい人なんだ。

「もちろんです。リドル様、我が君よ」

 隣から彼の足元へ移動し、跪いた。

「オリアーナ」

 彼の手を掬い取り、頭(こうべ)を垂れる。こんなことをしたのは初めてだけど、自然と体が動いた。彼が笑っている気がする。
 私はいつまでこの人の傍にいるのだろうか……否、いられるのだろうか。いつの日か、この人に捨てられる時が来るだろう。殺されるかもしれないな。だけど、捨てられたって、殺されたって構わないのだ。

「私はあなたが知りたい」

 それまでにあなたを知るから。自分に素直に生きて死んでいきたい。私が興味を示したんだ、絶対に楽しくなっていくだろう。
 だから付いて行く。
 ――それが私の人生すべてを賭けることになろうとも。




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bkm
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