4

 ――恒道館道場

「いや……あの、ホント……スンマセンでした」
「ふふ……っ」

 頬がはれ上がり、鼻血を流している銀時を女は壁に寄りかかり笑いながら見ていた。

「ゴメンですんだらこの世に切腹なんて存在しないわ。アナタのおかげでウチの道場は存続すら危ういのよ」

 新八の姉、妙の話を女は黙って目を伏せ聞いていた。

「鎖国が解禁になって二十年……。方々の星から天人が来るようになって江戸は見違える程発展したけど、一方で侍や剣……旧き権勢を誇った者は今次々と滅んでいってる。ウチの道場もそう……廃刀令のあおりで門下生は全て去り今では姉弟ふたりでバイトしてなんとか形だけ取り繕ってる状態。それでも父の遺していったこの道場護ろうと今まで二人で必死に頑張ってきたのに……
お前のせいで全部パーじゃボケェェ!!
「おちつけェェ姉上!!」

 再び銀時に殴りかかろうとした妙を新八は羽交い絞めにすることでなんとか抑えこむ。

「新八君!! 君のお姉さんゴリラにでも育てられたの!! 待て待て待ておちつけェェ!!
切腹はできねーが俺だって尻ぐらいもつってホラ」

 ピッと妙と新八に差し出したのは、"万事屋 坂田銀時"と書かれた名刺だった。

「この俺万事屋銀さんがなんか困ったことあったら何でも解決してや……」

 お前に困らされてんだろーが!! と姉弟にボコボコと蹴られている銀時を女性は大笑いしてみていた。

「アハハッ!!(爆笑)」
「ちょっわ、笑ってな……ぐほ、いで助け……ぐああっ! て欲しいなーッ!!」

 ついには白目を向いて気絶してしまった銀時を突っつきながら遊んでいた女性はこの道場に近づいてくる気配と足音に扉のほうを睨んだ。

ドガァァ!!ダン!!

「くらァァァ!! 今日という今日はキッチリ金返してもらうで〜〜!!」

 戸を蹴り倒してキノコ頭の天人が三人、土足のまま中に踏み込んできた。

「いい? きのこを食べてハイになるのは配管工のおっさんだけだから。そんなことしても私達が得られるのは腹痛と下痢だから。あのキノコの色見るからにやばいでしょ。絶対鍋の具の代わりなんかにしちゃダメ」
「ダメなのはアンタ!! この道場に来てからずっと笑いっぱなしで、やっとしゃべったと思ったらッアホか!! なんなの鍋の具にするわけないでしょーが!!!」
「アッハッハッハ! それもそうね! 確実にまずいわ!」


prev next
(7/13)
bkm
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -