銀時が少し振り向きながら言うと言葉が途中で切れてしまった。それも……。
「今時侍雇ってくれる所なんてないんだぞ!! 明日からどーやって生きてけばいいんだチクショー!!」
少年Mは怒りと共に木刀を銀時たちに向けて振り下ろした。
銀時が急ブレーキをかけたことで、悲鳴のような甲高い音をタイヤが鳴らした。スクーターの後輪が浮かび上がり、女は座っていたところから宙を舞い、バイクの前に華麗に着地した。
ゴッキン……という音と共に少年Mが股間を抑える。
「う゛っ!!」
「あらら〜……痛いいたーい……」
まぁ、……少年Mのアレに、バイクが直撃してしまったわけである。
「ギャーギャーやかましいんだよ腐れメガネ!! 自分だけが不幸と思ってんじゃねェ!!」
「ちょっと……私が吹っ飛んだことはスルーなの? ……あとで、覚えてなさい……」
「んん? 何か言ったか?」
「いーぇ! 何も言ってないわ!」
首を傾げる銀時に対して女はニコニコと笑った。
「いいか? 世の中にはなァ、ダンボールをマイホームと呼んで暮らしてる侍もいんだよ!! お前そーゆーポジティブな生き方できねーのか!?」
「あんたポジティブの意味わかってんのか!?」
「それ、ただのそこらへんにいるホームレスじゃない」
そのときだった。大江戸ストアと書かれた店の自動ドアが開いた。
「あら? 新ちゃん? こんなところで何をやっているの? お仕事は?」
「げっ!! 姉上!!」
少年Mは思いっきり顔をしかめて、何歩か後退る。お店から出てきた女はこの少年Mの姉のようだ。にこり、と人当たりのいい笑みを浮かべていた女だったが、次の瞬間にはその顔は凶悪なものへ様変わりする。
「仕事もせんと何プラプラしとんじゃワレ ボケェェ!!」
「ぐふゥ!!」
マウントポジションから少年Mを殴り続ける姉。その様子は人間離れしているような気さえした。
「お〜お見事〜」
女は状況を理解しているのかしていないのかパチパチと拍手を送った。少年M、新八の姉が新八をタコ殴りにしてる間に、銀時はバイクに跨り爽快に走り去ろうとしたが、
「(ニタァ)」
不気味に笑った新八の姉に捕まった。
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bkm