「私はそれを、護るために苦しみたいの」
道場を護るために、きのこ天人たちに連れられて妙は道場から去っていった。
「あら、美味しそうなイチゴ!」
冷蔵庫を覗き込み、つまもうとした手を銀時に掴まれた。
「まあ待てよ。そのまま食べるのも美味そうだが、ちょっと手間をかけたほうがより美味いぜ?」
「へぇ……どうするの?」
銀時はニヤリと笑った。
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「んだよチキショー!! バカ姉貴がよォォ!! 父ちゃん父ちゃんってあのハゲが何してくれたってよ、たまにオセロやってくれたぐらいじゃねーか!!」
新八は庭で木刀を振り回していた。怒りに身を任せた剣はあまりにも荒々しく乱れていた。
「父ちゃんハゲてたの?」
「いや……精神的にハゲて……ってアンタらまだ居たんですか!? しかも人ん家で本格的なクッキングに挑戦してんの!!」
銀時はホールケーキの最後の仕上げと言わんばかりに、生クリームを絞り飾りつけをしていた。
「ケーキを作るのはいいけど、片付けが面倒なのよね。油モノって」
「作るなら片付けまでやれ。片付けられないなら作るなってやつだな」
ケーキが作り終わり温めた包丁でケーキを切り分けながら銀時は言った。
「どーでもいいわ!! なにそのお母さん目線!」
「定期的に甘い物食わないとダメなんだ俺」
「だったらもっとお手軽なもの作れや!!」
ちなみに言うと銀時の切り分け方は大変不平等で、1:5ぐらいの割合である。
もちろん5が自分のほうであるが、女性からの好感度を上昇するためにはなんちゃって紳士の称号が必要だ。ホール食いをあきらめて、1のケーキを女性の前に差し出すも、女性は笑顔で5のケーキが乗った皿に手を伸ばし、吸引力の変わらないただ一つのあれの如く、口へ放り込んでいった。
「……ねーちゃん追わなくていいのか?」
銀時は肩を落としながら、目の前のケーキにフォークを突き刺した。
「知らないっスよ。自分で決めて行ったんだから……。姉上もやっぱ父上の娘だな。そっくりだ」
新八の脳裏には布団に横になっている父とその傍らにいる過去の妙と自分の姿が過ぎった。
「どんなに変わろうと人には忘れちゃならねーもんがあらァ」
「親が大事にしてたものを子供が護るのに理由なんているの?」
「今の時代そんなのもってたって邪魔なだけだ。僕はもっと器用に生きのびてやる」
「そーかい……でも、」
「私たちにはとてもアナタが器用になんて見えないわ」
新八は今にも溢れ零れようとしている涙を必死にこらえていた。
2017/06/21