第3話 雲雀妹、とお兄様。


 雪子が廊下を歩いていると、台所から話し声が聞こえた。

「まぁ、どうしましょうか」
「とりあえず恭弥さんに連絡を……」
「ねぇ、どうしたの?」

 お手伝いさんたちが二人、中にいた。

「あ、お嬢様。あのですね、恭弥さんがお弁当を置いていってしまわれたみたいなんです……」

 彼女たちの手の中にはいつも恭弥がいつも持って行っている黒い包みがあった。

「ふーん……」

 そこまで興味をそそられるような話ではなかった。だが、よく考えてみろ。学校に、堂々と入れる大義名分(お弁当を届ける)ではないか! 途端に雪子の顔がきらきらと輝き出す。

「ぼくが届けに行く!」
「ほ、本当ですか?」

 雪子は机の上のお弁当をクロネコの中に丁寧に仕舞って、しっかりとファスナーを閉める。そして、女中たちに向き直り、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。

「お兄様に連絡しないでね。驚かしてあげたいから!」
「「(まぁ! なんて可愛らしいんでしょう!!)」」

 雲雀雪子(5)の冒険が今、始まった。

「今日はお兄様の学校の探検だね」


・・・・・・
・・・・
・・


綱吉 side

「あれ? ……京子ちゃんまだ来てないのかな……」

 いつも自分よりも早く登校している想い人の席を見つめるが、そこには誰もいなく、荷物も置かれていなかった。

「沢田ー」

 京子ちゃんの友達である黒川が腕を組んで俺の前に立つ。

「お、おはよ……黒川」
「はよ。それよりも、アンタ京子見なかった?」
「えっ!! み、見てないけど……」
「それもそうよね。……はぁ、あんなガキに構ってるから」

 黒川はやれやれとため息をついた。……ガキ?

「ガキって、どういうこと?」
「さっき小さなガキが校内に入っていったのよ。京子は迷子だといけないから! とか言って走って追いかけってちゃうし……」

 わー……流石京子ちゃん、優しいな……。胸がきゅんと締まると同時にほんわかした気分になった。って、そのガキってもしかして……!?

「く、黒川……その子供ってもしかして、牛柄の服着た、もじゃもじゃ頭?」
「はぁ? なによそれ。よく見えなかったけど……たぶん、そんな変わった容姿じゃなかったと思うけど?」
「そ、そっか。よかった」

 ランボじゃないなら、一安心……。アイツ来ると面倒だからなぁ。


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