閑話


「隊長」
「口を閉じろ、手を動かせ」
「隊長…!」
「聞こえなかったか?口を閉じろ、手を動かせ」
「たい」
「口を閉じろ、手を動かせ」
「た」
「口を閉じろ、手を動かせ」
「…………」

ある日の休日。
休日出勤させられたクラサメはすこぶる機嫌が悪かった。
今日、休日出勤させられたのは先日、彼女が教頭に悪戯をしかけたからだ。そしてクラサメは彼女の担任として責任を押し付けられてしまった。完全にとばっちりである。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あの」
「用件は10文字以内だ」
「じゅ、じゅうもじなんて」
「そこまで。手を動かせ」
「(こわい…!)」

穴が開くかと思うくらいナマエはクラサメに見つめられていた。この場合、睨み付けられているといったほうがいいだろう。
休日出勤ということでクラサメに仕えているトンベリはテラスでサボテンダーとお茶をすると言っていた。つまり、今はクラサメと二人きりである。本当ならクラサメとのランデブー擬きを考えていたナマエだったが、不機嫌なクラサメを前に尻込んでしまった。
目の前にある原稿にペンを走らせる。適当に「目の前に教頭がいたからついやってしまいました。悪気はありませんでした。ごめんなさい、もうしません」などなど、何枚書いたかわからないほどの反省文を書いていく。もちろん反省はしていない。けれど休日出勤させられたクラサメには少しだけ同情した。

最後の一枚を書き終わると、はぁ、と深く溜め息を吐く。

「書けたか」
「はい。さすがに30枚も書くのは疲れますね」
「どうせ上っ面だけの反省文だろう。次は50枚に挑戦してもらうからな」
「うわー…50枚も同じこと書きたくないなぁ…」

クラサメに反省文の束を渡す。それを受け取ったクラサメは席を立った。ナマエは慌ててクラサメの服を掴む。

「ま、待ってください!」
「…なんだ」
「少し話しましょうよ」
「お前と話すくらいならチョコボと話すほうがマシだ」
「チョコボ以下!?」
「で、用件はなんだ。5文字以内で答えろ」
「(難しい!)え、と」
「あと3文字」
「みずぎ!」
「……は?」
「だから、水着です!」
「…意味がわからないんだが」
「おニューの水着買ったんです、見てください!」
「他を当たれ」
「クラサメ先生がいいんですー!お願いしますー!」

クラサメの服を引っ張り離そうとしないナマエにクラサメは溜め息を吐く。ナマエに振り返るとクラサメは心底嫌そうな顔で「脱げ」と言った。

「えっ!?ここでですか!?ちょ、ちょっとここでは…」
「制服の下に水着を着ているのはとうに知っている。お前に構っているほど私は暇ではない。早くしろ」
「…ぬ、脱いでる途中で逃げませんか?」
「逃げたらお前が可哀想だろう」
「哀れんだ目で見ないでください!」
「後ろ向いててやるから早く脱げ」
「それ、誰かが聞いたら勘違いしますよ?あっ、まっ、待って待って!脱ぐ、脱ぎますから!見てくださいー!」
「…お前のその台詞も勘違いされるぞ」
「私、クラサメ先生なら勘違いされても構いません」
「私は御免だ。早くしろ」
「辛辣!」

後ろを向くクラサメに、ナマエは急いで服を脱ぎ捨てる。「いいですよ」とナマエが言うとクラサメは振り返った。

「ど、どうですか?」
「…………」
「…………」
「………ふん」
「!?」

クラサメは鼻で笑う。その反応に、ナマエはムッと唇を尖らせた。

「なんですかその反応」
「生憎、そういうのはエミナで慣れてるからな」
「え、エミナ先生と比べないでください!」
「早く服を着ろ」
「感想それだけですか!?」
「十分だろう。はっきり言ったら傷付くだろうしな」
「……(何も言い返せない…!)い、いいですよ、私、ナインに見せてきますから!」
「止めておけ。ナインが可哀想だ」
「どういう意味ですか!」
「後ろを向いててやるから20秒以内に服を着ろ。反省文追加させるぞ」
「く…いつか見返してやるからな!」
「15秒」
「あぁぁもう!クラサメ先生のばか!」
 

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