時渡り 〜貴方を護りたい〜 5
「・・・なあ総司。
お前の夢って何だ?」
「新撰組の剣として近藤さんの役に立つことです」
「はは。即答だな」
月明かりが差し込む部屋で、沖田の布団へ当然のように潜り込んで来た原田のそんな笑い声にも、沖田は上手く反応出来ずにいた。
今日は、いつもより長く一緒に居る。
その事が気になって仕方ない。
「落ち着かねえか?」
そんな沖田を腕に抱いて原田が問いかけた。
「そりゃ、そうですよ」
自分の病は感染するもの。
その意識の強い沖田が言えば、原田が真摯な表情で沖田を見た。
「左之さん・・?」
その瞳を不思議そうに覗き込んだ沖田の唇を原田が不意に塞いだ。
「・・んっ・・ふっ・・」
侵入した原田の舌に己の舌を絡めそうになって、沖田は唐突に我に返った。
「左之さんっ」
逞しい胸を押し返せば、傷ついた原田の瞳と出会う。
「そんなに、嫌か?」
沖田の頬に触れる原田の手。
それは、独特の熱を帯びて沖田を誘う。
「嫌じゃないです。でも、駄目に決まっているじゃないですか」
沖田が言えば、原田が苦笑を浮かべた。
「そうか。そうだよな。悪ぃ」
少しだけ沖田の身体を離した原田に安堵して、沖田は大きく息を吐いた。
「本当ですよ。こうしているだけでも恐ろしいっていうのに。もっと恐ろしくなるようなことしないで下さい」
告げる言葉。
それさえも、この空気に病の因を撒き散らしそうで怖いと沖田は思う。
「恐ろしい?」
しかし、その言葉に原田は意外そうな声を発した。
「そうですよ。
忘れているのかも知れませんけど、感染する
んですよ、僕の病は」
言葉にすれば、本当にこの病が原田に感染してしまうような気がして、沖田はその身をなるべく原田から遠ざけようとする。
「感染する・・・。
総司。
それは、お前の身体が辛いから拒んでる訳じゃねえ、ってことか?」
それなのに、何処か喜びさえ感じられる原田の声。
「左之さん・・・?」
「俺に抱かれるの、嫌か?」
真っ直ぐな瞳に問われ、沖田は思わず本心を口にした。
「そんなの。
嫌な訳ないじゃないですか」
何処よりも安心できる原田の腕のなか。
原田の想いを強く感じられる行為を厭う筈など無いと、沖田は思う。
「そうか。嫌じゃねえか」
喜びを含んだ原田の声が低くなった。
そう感じた瞬間、沖田は原田の強い腕に抱き込まれていた。
「お前が拒む理由が、俺への気遣いだった、ってえなら。・・・もう、遠慮はしねえ」
言葉と同時に侵入してきた舌と手。
容赦無く沖田の弱い箇所を責める動きに、理性は容易に失われていく。
「・・んっ・・左之さ・・っ・・だめ・っ・・・・て」
そんな言葉を封じるよう、激しさを増す原田の動き。
「総司・・総司・・愛してる」
耳に注がれる甘い声。
真実沖田を求めて蠢く身体。
「・・さ・のさ・・っ・・んんっ・・」
強く激しく求める動きに翻弄され、沖田はやがてすべてを原田に解放した。
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