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優しくしたくて酷くしたい

総司が望むことならば
何でもしてやりたいと思う。


そんな気持ちを原田が口に出せば、
誰もが口を揃えて言った。

“甘すぎる”

“ベタ惚れだな”

“ごちそうさま”

心底惚れていることに間違いはない。

が、しかし……



総司が望むことを、何でもしてやりたい。



それは決して「純粋な愛情」だとか「優しさ」だとか、そんな風に綺麗なもので出来ているのではない。今はまだ沖田も、沖田を想うその周りの人間でさえも気付いていない――原田のみが知っている、隠せるならば永久に、隠しておきたいと願っている心の隅に潜むどす黒い感情。


 総司が望むことならば、
  なんでもしてやろう――


素直に他人の愛情を受け容れることが出来ない、不器用な沖田総司という存在に、
甘えてもいい、
弱さを見せてもいい、
全部で寄りかかっていいのだ――と、少しずつ憶えさせて、



そうして少しずつ侵蝕して



(いっそのこと、俺なしじゃ生きられないようになっちまえばいい……)



好きだから、何でもしてやりたい。
ただ純粋にそう思うのも、確かな本音。

けれど、

そうして依存して依存して依存して、
己が居なければ立ち上がれなくなってしまえばいいと願うのもまた、隠れた本音。



(俺に侵食されつくしたお前の手を、離してみたい、だなんて)



心のそこから笑って欲しいと願うのと同じだけ、絶望に歪ませてみたいと思う残酷な心。沖田と深くかかわっていくうちに、いつしか原田の中に芽生えていた(もしかしたら、最初からあったのかもしれない)真っ黒な感情。


お前が望むことならば

何でもしてやる……けれど――




(なぁ総司。全部で俺を、信用するな)




きっと傷つけてしまうから。



優しくもしてあげたいし、全身で甘えて頼って欲しいんだけど。そうなった沖田さんをいきなり突き放して「別れよう」的なことを言う。あまりの不意打ちに、無防備な沖田さんの「この世の終わり」みたいな表情が見れたとしたら、その時にもしかしたら至福が味わえるんじゃないだろうか、と。「あ、本当に惚れてくれてるんだ」みたいな。
そんな危険なトラウマを埋め込んでみたいと思ってしまった原田さん、それもまぁ愛故に、なんですけど。
そんな酷い男の部分を一生懸命隠してる左之さんとかもいいんではないかな、と思った短文。




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