対話論


死んだふりでいい
「むっかつく」
臨也の不機嫌までのスイッチはいつもどこにあるか分からない。決まって何かを急所である眉間に自分で溜めた情報、の詰まったファイルを強くかつ的確に当ててくるわけだ。痛みを感じにくいのかもしれないとは言え多少の衝撃はあるもので、いつだったかこいつが言っていた。どれほど力がかかるかと。正確な値まで覚えていられる程に俺は暇ではないから違っても仕方ないとは思う、2トン位?だか何だか、厚い法律の本だとかそんなもので殴れば相当の力がかかるんだと、目の前で言っていた。だとしたらこの衝撃に関する要因も相当の力を持っているんだろう。

「痛い?」「ああ」
「嫌だ?」「ああ」
そう。目を細くして薄ら笑いを消した。消し去った。勢いよく焦点を定めて間違いなく眉間に落とす、やはり衝撃がある、間違いのない衝撃、死んだふり。死んだふりをすればこいつは満足するから俺は毎回こうなると目を伏せてそのまま倒れる。そうすればまた何回か衝撃を落として、死んだかと無邪気に一通り笑ったあと放心する、俺は動かないことに集中して、それからしばらく眠ってみる。死んだふり。


「死んだかって、思って」

嗚咽と疑心を混ぜた苦い顔は似合わなかった、ようで似合ってたんだと思う、ばちりと目を覚ましたとき頭上に広がる顔、今でこそ大してこの顔に何も思えないし思う気もない一端の通過点でしかないと思念を巡らせて巡らせて巡らせた結果そして今(思わねえだろ、俺がこんなに頭を使うんだって)満たす工程が見つかった今お前に何も思うところがない
「良かった、」すっかり臨也は安心しきって、「1人にしないで」最後には寝る。泣き疲れたのか殴り疲れたか分からないもの、そして寝ることで全部忘れるようだった。


「なんで死んでないの」

対話の不要性、無謀、意味なんかなくて臨也と混じり合うことない感情は不溶性、何も繋がらない縛りもない、発する言葉は最低限。どうだ、むしろ今の状態が本来あるべき姿で簡素な関係は実のところ良いのかもしれないなんて自己完結。死んだふり、全てがない交ぜ対話論
論文発表なんて馬鹿げてる。さあ終わろうもう終わろう頭が少し痺れてきた、俺は疲れた、また衝撃を受けるのを予想して、それからまた死んだふり、俺の言葉も死んだふり。
死んだ、ふりも、死んだ




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