腹痛


痛い。どこかを怪我したわけじゃなく、ただ腹が痛い。絞られるような痛みがまるで雑巾にでもなったみたいだと考えはしたけど気分が悪いのでそれ以上考えなかった。痛いし。チャットの最中だし。腹が痛い時はあっためるんだったかな、ひざを抱えて頭を乗せる。痛い。うぐ、と吐き気を催す時みたいな呻きが出て痛みが増して上へ上へと何かを追い込むそいつは終いには心臓の下まで来てる、最悪だ、呟いて少し頭を上げたら黒の画面に変わってた。見慣れた青のアイコン、田中太郎つまり帝人くんからの内緒モード。

『何かあったんですか?今日は発言が遅い気がして』
「ちょっと腹痛。何てことは無いよ」
『そうなんですか、気を付けて下さいね』

毎日のように見ていれば分かるもんなんだろうか、見てて呆れる。それほどまでにチャットに感化されてんだってね。慣れた、染み込んだ手付きでキーを叩いておいてまた頭を垂れる。じわじわ広がってる。

『余計な物を食べたか。食べようとしたか。じゃないですか』
「例えば?」


『あなたが関わった全部』


それこそ俺は君に食われかけてんじゃないかと疑ったけど、今上がってくる痛みだって君かもしれないと思えてしまって恐ろしいどころか楽しくなってきてる。本格的に食われてるのかも。だから今痛い。腹痛がおさまらない。反応をすることもなく腹痛を掲げておいて退室した。『腹じゃないどこが痛いのにも気付かないんですね』そう帝人くんは刺して、『お疲れ様でした』定型文を貼り付けて切れた。腹を手の腹で押さえて天井へ頭を向ける。背もたれが曲がる。



「痛い、し」




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