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乗客はすでに全員降りており、バスの降り口付近で残った蓮見さんと祭はべらべらしゃべっていた。


その時
「キーンコーンカーンコーン」
と鳴海高校のチャイムがなる。

「あー!」

祭はバスからちらりと見えている鳴海高校の時計台を見た。

時刻は8時30分。
予鈴だ。

「わっ!ごめんね祭ちゃん。急げ急げ!」

蓮見さんは困ったようにわらいながら、再度帽子を被った。

祭は蓮見さんに礼をして、また鞄を背負ってバスをかけおり、全力で走り出した。

ーーーー

バスから学校までがなかなか遠いのだ。
祭はひぃひぃいいながら、学校までの緩やかな坂を走る。

やっと学校についた。
3年の教室は3階だからすぐなのだが、そこにたどり着くには、移動教室で階段をふさいでいる他クラスをかき分けないといけない。

汗をかきながら、鞄を背負って走っている祭を他の生徒が冷ややかな目で見ている。

祭はもともと他人の目を気にしないので、そのままスルーしてマッハで他の生徒を蹴散らしながら3階廊下を失踪した。

「キーンコーンカーンコーン…」
本鈴が鳴り出す。

それと同時に祭は教室に駆け込んだ。

「「セーフ!」」
みんなに拍手で迎えられ、祭は手を挙げてみんなの歓声に応えてから席に座る。

「はあはぁ。」
今まで走ってきた分の、汗と疲れが祭を襲った。
なぜか眠くなった祭は結局、遅刻はしなかったもののその授業を寝て過ごした。

ーーーー

「祭!次体育だよ。着替えるよ!」
美奈子に起こされ、祭は体育のために体操服に着替えようと鞄を漁った。

「あれ?」
しかし、どこを探しても肝心の体操服はなく、朝に着ていたパジャマしか入っていない。

美奈子はブラウスのボタンを外しながら、鞄を覗き込んで
「バカちん!
寝ぼけてんの?体操服借りてきなよ。」
と祭の額を叩いた。

祭はハッとして、自分が間違えて鞄にパジャマを入れてきたのだとやっと気づく。
「ありがとう〜
今起きたよ。」
祭はそう感謝すると、体操服を借りるために教室を出た。


(たしか、6組体育あったよね。)
祭は小走りで6組に向かう。

祭は6組に入った瞬間、目を丸くした。
一つの机にかなりの人数がたかっている。
その中に、祭の知っている後ろ姿が見えた。

「すーちゃん。」
祭がその後ろ姿の人物を呼ぶと、すーちゃんこと「北原涼風」がこちらに気付き、走ってきた。

すーちゃんが走ってきたことによって少し空いた隙間から、あの集団の中心にいる人物が一瞬見えた。
(ん?)
癖のついた黒髪。

「どうしたの?」
すーちゃんは愛くるしい笑顔を祭に向ける。
「体操服貸してくれない?」
その言葉にすーちゃんは頷くと、自分の鞄から体操服を取りだし、持ってきてくれた。

「ところであれはなに?」
祭が体操服を受け取りながら、眉間にシワを寄せて尋ねると、

「転校生の竹内紅助君だよ。」

「紅助!?」
祭が驚きの声を上げると、集団の中心の人物が立ち上がり、中心からかなり険しい表情で出てきた。

「やっぱり!紅助じゃんか!」
祭は一週間ぶりの再会に満面の笑みを浮かべていた。









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