女子高生の朝


「「いってきまーす。」」

ーーーー

「んん。」

ーピエロ事件は何事もなかったように幕を閉じた。

ニュースでは、犯人は自殺。そう偽造されている。


今日は事件の一週間後。ー
ーーーー

「って、うわああ!」
祭はベッドから飛び上がっり、枕元の目覚まし時計に目をやった。

「7時?」
長い針はいつも通り12時のところ。
祭は朝練のために、7時に家を出ている。
今日は朝練には間に合わない。

(あれ。あいつらの「「いってきまーす。」」であたしは起きたんだ。)
祭はボーッと考えながらベッドに座った。

(あいつらは帰宅部。)
普通はこんなに早く家を出たりしないのだ。

「まさか!」
祭は何かに気づいたのか、再度目覚まし時計に目をやった。

短い針は8時を指している。
「やっぱり!」
祭はにっこり笑って。
ベッドから飛び出した。
「うわあー。なんでやつらはあたしを起こさないんだー!」

嘘のようだが、まだ祭は一度も遅刻をしたことがない。

そして祭は初めて、自分の寝相に感謝した。
美しすぎる寝相のおかげで、髪に櫛を数回通すだけでさらさらストレートになるのだ。


祭は制服を着てから、顔を洗って、歯を磨いてから鞄に色んな物をガサガサと詰め込むと、家を飛び出した。

ーーーー

綾瀬家から私立鳴海高等学校まではバス一本である。
他の電車を乗り継いで来る人たちよりは幾分かましなので、一時間目が始まる30分前に出ればつくようになっている。

一時間目は8時35分から、今は8時15分。
普通は間に合わない。

(あたしは…陸上部だ!)
祭はバスまで全力を決意し、走ればずれおちる鞄をリュックの如く背負い、全力で走り出した。

道行く人々は風のようにすれ違っていく祭を目を丸くして見つめる。

祭はそんなことは全く気にせずに、なんとかダッシュでバス停にたどり着いた。

「ふおお。
間に合った。」
時刻表はバスがあと1分でこの駅に着くことを示していた。

(ギリッギリ間に合うな。)
祭は息を荒げ、汗を腕で拭いながらため息をはく。

その時、祭の目の前にバスが止まった。
「ふう。」
祭はもう一度ため息をはいた。

ーーーー

お目当ての鳴海高校前は、最終駅だ。

途中乗車の祭は座れるわけもなく、だらだら汗を流しながらたっていた。
他の客は驚いた顔で祭をチラチラ見ている。


バスに乗って約10分、やっと鳴海高校前についた。


「ありがとうございました。」
祭は笑顔で運転手に定期を見せる。

その時、
「あっれ。祭ちゃん?」
聞き覚えのある声。

「うわあ。お久しぶりです。」
祭は目を輝かせた。
目の前にいる運転手は父の代のブラックナイトに所属していた『蓮見遼』だったのだ。

以前、双子に「遼さん、バスの運転手だよ。」と言われたことはあるが、会うのは何年ぶりだろう。

今でも爽やかで若い。ブラックナイトに入っていた時は何歳だったのだろうか。

「ひーかなには会うよ。
祭ちゃんは、いつも朝練とか行ってるの?」
蓮見さんは爽やかに笑いながら、よく似合っている運転手の帽子を外した。

最終駅なので、少しはゆっくりできるのだろう。
祭も久しぶりの再会に急いでいることをすっかり忘れていた。









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