HomeopathyU -The frauds- | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

prev / next
[mokuji / bookmark / main / top ]

3.


優しくて甘い蜜のような時間。

こんなに恋人らしい時間を過ごしたのはいつぶりだろう。何も心配せず、余計なことを考えず、ただ恋人に甘えて幸せに浸る。

こんなにも穏やかな朝を迎えたのは、こんなにも優しい朝日を見たのはいつぶりだったか。

だが、同時に不思議にも思う。

(…どうしたって言うんだ?)

慧がとても上機嫌だ。

昨日の夜の情事、最後は優しかったものの、それは空イキで怯えた俺への罪悪感が理由であって、本来なら慧は俺が加賀美にハニートラップを使ったことに対して怒っていた。

必要もなく誘惑した、あるいは完全に浮気だと捉えられても仕方ないと思う。

(なら、なんでこんなに上機嫌だ?)

少し拗ねたり、不機嫌になるのが普通だ。

23時前に部屋に戻って、しばらく放置されてから長くじっくりと抱かれたと思う。なら、深夜まで俺を抱いて、今は起きたばかりだから別に何かいいことが起こったわけでもない。

単純に久々に寄り添って眠ったり、加賀美の香りが消えて、代わりに慧の香りが染み付いたことが原因でもなさそうだった。

(…分からないな)

だが、問う気にもなれなかった。

慧の機嫌が良くなると、雰囲気が柔らかくなる。普段の肉食動物のような少し強引で凛々しい雰囲気も好きたが、リラックスして、幸せに浸っているこの雰囲気も好きだった。

何も特別なことはないのに、傍にいるだけで幸せは俺にまで伝わってきて、仕事や依頼で溜まった疲れも瞬く間に消えていく。

「慧」

「なんだ?」

「呼びたかっただけだ」

抱き締めて、擦り寄って。

この時間が何よりも大切だった。

心がぽかぽかして、真冬だというのに寒さを感じなくて、春の花よりも芳しい香りに包まれて、絡ませあった指から幸せが伝わってくる。

(好きだ、ばぁか)

[ 161/179 ]
prev / next
[ mokuji / bookmark / main / top ]

目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。